こんばんは!薬剤師のしぐです。
膵外分泌機能不全に使われる膵消化酵素補充剤、
リパクレオンカプセルと、リパクレオン顆粒300mg分包。
供給が不安定な状況が続いていましたが、通常出荷が再開となりました。
いやー、これは本当に助かります。
薬局では、処方箋が来るたびに、
「在庫、大丈夫かな…」
「次回分まで確保できるかな…」
「卸さんに確認しておいた方がいいかな…」
と、どうしても在庫状況が気になってしまう薬のひとつでした。
特にリパクレオンは、単純に「同じような薬に替えておきましょう」と簡単に考えられる薬ではありません。
だからこそ、今回の通常出荷再開は、患者さんにとっても、処方する医療機関にとっても、そして薬局にとっても、本当にありがたいニュースだと思います。
せっかく供給も落ち着いてきたところなので、今回は改めて、
「そもそもリパクレオンって、どんな薬だったっけ?」
というところを、少し詳しくおさらいしてみたいと思います。
リパクレオンってどんな薬?
リパクレオンの一般名は、
パンクレリパーゼ
です。
分類としては膵消化酵素補充剤。
効能・効果は、
「膵外分泌機能不全における膵消化酵素の補充」
となっています。
添付していただいた資料でも、リパクレオンは膵外分泌機能不全患者の消化吸収を改善する高力価消化酵素薬として紹介されています。
では、この「膵外分泌機能不全」とは何でしょうか。

そもそも「膵外分泌機能不全」とは?
膵臓には、インスリンなどを分泌する「内分泌機能」だけでなく、食べたものを消化するための消化酵素を十二指腸へ送り出す外分泌機能があります。
この外分泌機能が低下し、十分な膵消化酵素を出せなくなった状態が、
膵外分泌機能不全
です。
添付資料では、
膵臓の外分泌機能の障害によって起こる、三大栄養素の消化吸収障害を特徴とする病態の総称
と説明されています。
膵酵素が不足すれば、せっかく食事を摂っても十分に消化・吸収できません。
その結果、
- 脂肪便
- 下痢
- 腹部膨満
- 体重減少
- 栄養状態の悪化
などにつながることがあります。
添付文書では、非代償期の慢性膵炎、膵切除、膵嚢胞線維症などを原疾患とする膵外分泌機能不全で、脂肪便などの症状を呈する患者が対象とされています。
リパクレオンには何が入っている?
パンクレリパーゼは、ブタ膵臓由来の消化酵素で、
リパーゼ
プロテアーゼ
アミラーゼ
を含んでいます。
つまり、
脂肪
↓
リパーゼ
蛋白質
↓
プロテアーゼ
デンプン
↓
アミラーゼ
という形で、食事に含まれる栄養素の消化を助けるわけですね。
PMDAの添付文書でも、パンクレリパーゼはこれらの消化酵素を含み、消化管内で脂肪、蛋白質、デンプンを分解して消化吸収率を高めるとされています。
「高力価」の膵消化酵素製剤
ここはリパクレオンを理解するうえで大事なポイントです。
添付資料では、リパクレオンは高力価膵消化酵素薬として紹介されています。
リパクレオン顆粒300mg分包1包には、
- リパーゼ:20,000~32,000 FIP単位
- アミラーゼ:17,000~30,000 FIP単位
- プロテアーゼ:1,120~1,980 FIP単位
が含まれています。
カプセル150mgでは、それぞれこの半量です。
単に「消化を助ける薬」というより、
不足している膵酵素をしっかり補充するための薬
と考えた方が分かりやすいと思います。
実は「腸まで酵素を届ける」工夫もされている
ここもリパクレオンのおもしろいところ。
膵酵素は、胃の中の強い酸にさらされると失活してしまいます。
せっかく酵素を飲んでも、十二指腸へ届く前に働かなくなってしまっては意味がありません。
そこでリパクレオンの粒には、
腸溶性剤皮
が施されています。
胃の中では酵素を守り、腸まで届けるための工夫です。
このため服薬指導でも重要なのが、
「砕かない・噛まない」
という点。
添付文書にも、砕いたり噛んだりすると腸溶コーティングが壊れ、口腔粘膜を刺激したり酵素活性が失われたりする可能性があるため、そうしないよう明記されています。
地味なポイントに見えますが、薬剤師としてはしっかり伝えておきたいところです。
リパクレオンの飲むタイミングは「食直後」
通常の用法・用量は、
パンクレリパーゼとして1回600mgを1日3回、食直後
です。
患者さんの状態に応じて適宜増減されます。
そして用量調整では、
年齢
体重
食事量
食事内容
食事回数
などを考慮することになっています。
これも考えてみれば当然で、
リパクレオンは「血圧を下げる」「血糖を下げる」といった薬ではなく、
食事を消化するために不足している酵素を補う薬
です。
そのため、食事との関係がとても重要な薬なんですよね。

実際、どれくらい消化吸収が改善するの?
添付資料でも紹介されていますが、国内第Ⅲ相試験では、非代償期の慢性膵炎または膵切除を原疾患とする膵外分泌機能不全患者において、パンクレリパーゼ投与による脂肪吸収率の改善が確認されています。
PMDA添付文書を見ると、7日間投与した試験で脂肪吸収率の投与前後差は、
プラセボ群:8.5%
パンクレリパーゼ1,800mg/日群:27.4%
でした。
さらに長期投与試験では、最大52週間の投与によって、
BMI
総蛋白
アルブミン
プレアルブミン
総コレステロール
トランスフェリン
レチノール結合蛋白
といった栄養評価項目が改善・維持される傾向も確認されています。
つまりリパクレオンは、
「便の症状を改善する薬」だけではなく、栄養状態を支える薬
というところが大切なんだと思います。
慢性膵炎診療ガイドラインでも推奨
添付資料では、「慢性膵炎診療ガイドライン2021」において、
脂肪便や体重減少を有する膵外分泌機能不全に対する高力価膵消化酵素薬の投与
が、
推奨の強さ:強
エビデンスレベル:A
として紹介されています。
脂肪便がある、体重が落ちている、栄養状態が悪くなっている。
そうした患者さんにとって、膵酵素補充療法が治療の大切な柱になっていることが分かります。
薬局で確認しておきたいポイント
リパクレオンが処方されている患者さんでは、個人的には単に、
「ちゃんと飲めていますか?」
だけで終わらせないことが大切だと思っています。
たとえば、
食直後に服用できているか
噛んだり潰したりしていないか
そして、
便の状態はどうか
脂っぽい便や便量の増加はないか
体重が減っていないか
食事がしっかり摂れているか
など。
薬が残っているかどうかだけではなく、
「ちゃんと消化・吸収できているか」
を見る薬なんですよね。
そこまで聞けると、リパクレオンの服薬フォローはかなり変わってくるように思います。
そして今回のリパクレオン通常出荷再開。本当に助かった…。
リパクレオン顆粒300mg分包については、ヴィアトリスから通常出荷再開のお知らせが出ています。
医薬品の供給不安が続く中、
「必要な患者さんに、必要な薬を普通に届けられる」
ということが、こんなにもありがたいことなのかと感じます。
リパクレオンのように、患者さんの消化吸収や栄養状態そのものを支えている薬では、なおさらです。
出荷調整になると、薬局では在庫を確認し、卸に問い合わせ、次回処方を見越して確保し、場合によっては医療機関と相談する。
ひとつの薬が不足するだけで、見えないところで本当にたくさんの調整が必要になります。
だから、
「通常出荷に戻りました」
この一文が本当にうれしい。
供給のニュースだけで終わらせず、こういうタイミングだからこそ、
「この薬は何のために使われているのか」
「患者さんの何を支えている薬なのか」
を改めて振り返っておきたいなと思いました。
リパクレオン。
供給が落ち着いて、本当によかったです。


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