
こんにちは、しぐです。
子どもの視力が下がってきたとき、「眼鏡の度数を合わせる以外にも、何かできることはあるのかな」と感じる保護者の方は多いと思います。薬局でも、目薬やサプリメントの相談から、子どもの近視が話題になることがあります。
そんななか、参天製薬の近視進行抑制点眼液「リジュセア」が韓国で承認を取得しました。日本では「リジュセアミニ点眼液0.025%」として、2025年4月から販売されている薬です。
今回のニュースをきっかけに押さえておきたいのは、海外展開だけではありません。「どんな目的で使うのか」「毎日どう使うのか」「費用はどうなるのか」という、家庭と薬局で実際に必要になるポイントです。
特に、近視の進行を抑えることと、すでに低下した裸眼視力を元に戻すことは分けて考える必要があります。今回は、その違いから整理していきます。
※2026年11月2日時点の情報です。国内での使用方法は日本の電子添文・患者向医薬品ガイドに基づきます。
リジュセアが韓国で承認された意味
韓国の参天製薬は2026年10月26日、STN1012700(リジュセア点眼液0.025%)の韓国での承認取得を公表しました。小児の近視進行抑制を目的とする、低濃度アトロピンの点眼剤です。
参天の「アジア事業地域」では、フィリピンに続く2か国目の承認とされています。ここでのアジア事業地域は、日本と中国を除く会社の事業上の区分です。「日本より先に承認された」「アジア全体で2か国しか承認されていない」という意味ではありません。
日本ではすでに使用されている治療の選択肢が、韓国にも広がったニュースとして捉えると分かりやすいですね。ただし、承認取得と販売開始は別の出来事です。韓国での具体的な発売時期や価格、医療保険上の扱いまで、日本と同じと考えることはできません。
保護者から海外ニュースについて聞かれた場合も、「日本ではすでに承認・発売されている薬で、今回は韓国での承認の話です」と最初に伝えると、情報が整理しやすくなります。
リジュセアミニ点眼液0.025%はどんな薬?
日本での一般名はアトロピン硫酸塩水和物。低濃度のアトロピンを含む、近視進行抑制のための点眼液です。濃度の0.025%は、1mL中に有効成分0.25mgを含むことを表します。海外表記の「0.25mg/mL」と濃度が違うわけではありません。
国内では2024年12月27日に承認され、2025年4月21日に発売されました。「近視の進行抑制」を効能・効果として国内で初めて承認された点眼剤です。
製剤は防腐剤を含まない1回使い切りタイプ。複数回使う大きなボトルとは扱いが異なり、開けた容器はその回の使用で終了します。残っている液を翌日まで保存して使うことはできません。
アトロピンという成分名は、眼科の検査などで耳にしたことがあるかもしれません。ただ、同じ成分だからといって、濃度や目的の違う点眼薬を置き換えたり、手持ちの製品を薄めて使ったりすることはできません。名称だけで判断せず、販売名・濃度・使用目的まで確認したいところです。
「見えるようにする」と「進行を抑える」は別の役割
眼鏡は、ピントを調整して日常生活で見やすくするためのものです。一方、リジュセアは近視の進行を抑えることを目的とします。
学童期の近視では、眼球の前後の長さである眼軸長が伸び、遠くにピントが合いにくくなることが問題になります。リジュセアは、その伸びを抑える方向に働くと考えられています。
「目薬を使い始めたら眼鏡はいらなくなる」という説明は適切ではありません。見え方に応じた眼鏡などの矯正と、近視進行抑制の治療は、それぞれの目的に合わせて考えます。
また、点眼後すぐに視力表の数字が上がるかどうかで、効果を判断する薬でもありません。日々の実感だけでなく、眼科で経過を追って評価することが大切です。

国内試験ではどのような効果が確認された?
承認の根拠となった国内のORANGE試験は、5~15歳の近視患者299例を対象とした無作為化二重遮蔽比較試験です。低濃度アトロピンの点眼液とプラセボを比較し、近視の進み方を評価しました。
日本の電子添文に示される投与24か月後の他覚的等価球面度数の変化量は、リジュセア群で約-1.01D、プラセボ群で約-1.64Dでした。解析に基づく群間差は0.637Dで、統計学的に有意な差が確認されています。
ここでのDは、レンズの度数に使われるジオプトリーです。視力検査の「0.3」「1.0」とは別の指標なので、そのまま読み替えることはできません。
注目したいのは、治療群でも平均として近視は進行していたことです。結果は「近視の進行を完全に止めた」ではなく、「プラセボより進み方を緩やかにした」と理解します。眼軸長の変化についても、プラセボと比べた進行抑制が確認されています。
平均の効果を、一人ひとりの約束にしない
試験の数値は治療の判断材料になりますが、「この子も2年間で必ず同じ差が出る」という予測ではありません。年齢やもともとの近視の状態、進行の速さなどが異なるためです。
薬局で相談を受ける場合には、「何%良くなるのですか」と聞かれても、視力が何%回復するかに言い換えないことが大切です。近視の進み方を比較した結果であることを、まず共有したいですね。
また、今回紹介している試験はプラセボとの比較です。他の濃度の製品、特殊な眼鏡、コンタクトレンズによる治療より優れていると、この結果だけで順位を付けることはできません。治療の選択は眼科で相談します。
どんな子どもが治療の対象になる?
「子どもの目に良い薬だから、健診で視力が下がったら誰でも始める」と考えるのは早すぎます。まずは眼科で、視力低下の原因を確かめる必要があります。
国内の電子添文では、適切に調節を低減した状態で近視と診断すること、弱視など治療を優先すべき他の眼科疾患がないことを確認するよう求められています。
国内試験の対象は5~15歳で、近視の程度や進行状況にも条件がありました。医師はその試験背景を踏まえて適応を判断します。「効能・効果の欄に5~15歳と書いてある」という説明とは区別が必要です。なお、5歳未満の幼児などを対象とした臨床試験は実施されていません。
学校健診は大切な入口ですが、健診結果だけで薬の適応を決めるものではありません。家庭では困っていないように見えても、受診の案内があれば確認につなげたいところです。
健診後の受診や日常の対策については、コチラでも整理しています。


使い方は1日1回、就寝前|最初に確認したいこと
国内の通常の用法・用量は、1回1滴、1日1回就寝前です。実際には医師の指示に従って使用します。
長く続ける治療では、説明を聞いた日に分かることと、家庭で無理なく続けられることは別です。保護者だけが覚えるのではなく、年齢に応じて子ども自身にも「いつ使う薬か」を伝えると、生活の中に組み込みやすくなります。
例えば歯磨きや就寝前の支度と同じ流れにする、家族の中で声をかける人を決めるなど、続け方を一緒に考えるとよさそうです。ただし、子どもが自由に取れる場所に置く方法は避け、保管の安全性も確保します。
点眼の手順は、実物を見ながら確認する
使用時は手を洗い、開封後の最初の1~2滴を目に入れずに捨てます。これは、開封時に生じる容器の破片を除くための手順です。
その後、容器の先端が目に触れないように点眼します。点眼後は1~5分間まぶたを閉じ、目頭のやや鼻寄りを軽く押さえます。他の点眼薬を併用する場合は、少なくとも5分以上間隔をあけます。
両眼に使用する指示がある場合、その回に両眼へ点眼したら、液が残っていても捨てます。「1回使い切り」は片眼に1滴使った瞬間に必ず捨てるという意味ではなく、その回の使用を終えた容器を再利用しないということです。
薬局では「使い切りなので残りは捨ててください」と伝えるだけでなく、最初の滴を捨てるところまで含め、説明書と実物で確認したいですね。細かな手順ほど、言葉だけでは抜け落ちやすい部分です。
点眼を忘れたら、翌朝に追加する?
患者向医薬品ガイドでは、点眼し忘れに気づいた場合、忘れた分は点眼せず、次の就寝前に通常どおり1回1滴を使用するよう案内されています。2滴に増やしたり、1日に2回使用したりしません。
「忘れたら気づいた時に使う」という一般的な案内を、すべての薬に当てはめないことが大切です。初回の説明で、忘れた場合の対応まで確認しておくと安心ですね。
副作用は「まぶしい」「かすむ」を具体的に聞く
リジュセアでは、散瞳の影響による羞明や霧視などが起こることがあります。子どもに対しては、「羞明はありますか」より、「外に出たときにいつもよりまぶしくない?」「黒板や本がかすんで見えることはない?」と聞く方が伝わりやすそうです。
症状が回復するまでは、自転車の運転や落下のおそれがある遊具の使用などを避けます。就寝前の薬だからといって、翌日の活動に影響しないと決めつけず、朝や登校時の様子も確認したいところです。
強い症状や気になる変化がある場合は、処方元に相談します。続けることだけを優先して我慢させる必要はありません。一方、自己判断で増減や中止を繰り返すより、症状と使用状況を伝えて対応を相談することが大切です。
緑内障や眼圧上昇の素因がある場合など、使えないケースもあります。受診先が変わったときや、ほかの目薬を使い始めるときにも、リジュセアを使用していることを伝えます。
市販薬を買うときも、お薬手帳を見せてほしい
電子添文では、抗コリン作用を持つ薬との併用に注意が必要とされています。抗ヒスタミン薬なども挙げられているため、薬局では風邪薬や鼻炎薬の購入時にも確認したい薬です。
「目薬だから、飲み薬の相談には関係ない」と思われやすい点が、実務では気になります。購入前に販売担当者へ使用中の薬を伝え、成分を確認してもらうことが大切です。すべての風邪薬が使えない、という説明にはしません。
お薬手帳には、医療保険で調剤された薬だけでなく、このような薬も記録しておくと相談に役立ちます。眼科の治療と、普段利用する薬局の情報をつなぐ場面ですね。
保管方法は「袋」と「点眼容器」を分けて考える
保管では、アルミの外袋を開けたときと、点眼容器そのものを開けたときの違いが重要です。
2026年3月改訂の国内電子添文では、アルミピロー包装の開封後、添付の遮光用投薬袋に入れて室温で保存する場合は3か月以内、2~8℃で保存する場合は1年以内に使用するとされています。これは、点眼容器を開けた残液を長期間保存できるという意味ではありません。
点眼容器を開けたら、その回に使用して残液を廃棄するルールは変わりません。外袋を開けた日を記録し、遮光用の袋ごと保管する方法を確認しておくと混乱を減らせます。
冷蔵する場合も凍結を避けます。保管条件が分からなくなったときは、自己判断で期限を延ばさず、医療機関や薬局に相談してください。
日本では保険が使える?2026年6月からの選定療養に注意
国内のリジュセアは薬価基準未収載で、薬剤そのものは保険給付の対象ではありません。ただし、発売当初の「治療に関連する診療がすべて自由診療」という説明を、そのまま現在の制度として紹介するのも適切ではありません。
2026年6月から、近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品の支給が、選定療養の対象になりました。薬剤に係る特別の料金は自己負担となり、制度上認められる診察・検査などは保険診療と組み合わせる仕組みです。
眼科学的検査には、近視進行抑制薬を使用する患者について年2回、1回の受診で2種類までといった算定上の要件があります。すべての検査が毎回保険になる、受診は年2回だけでよい、という意味ではありません。診療上必要な受診間隔と、保険の算定条件は分けて確認します。
費用は薬剤の料金だけでなく、診療内容や自己負担割合、助成制度の扱いによっても確認が必要です。全国一律の月額として断定せず、受診先に継続時の見込みを聞いておくと安心です。
薬局側も通常の保険調剤と同じ扱いにしない
院外で調剤する場合も、薬価未収載だからすべて一律に自費、あるいは選定療養だから通常の処方と同じ点数が算定できる、と単純化できません。
厚生労働省の通知では、近視進行抑制の医薬品のみを調剤する場合、調剤基本料は算定できないとされています。実際の請求は最新の通知・疑義解釈、処方内容を確認して対応する必要があります。
患者さんへの説明と会計で話が食い違わないよう、受け付ける前に薬剤費と算定可能な費用を整理しておきたいですね。

学校・家庭での目の使い方も一緒に見直す
治療の選択肢が増えたことは心強い一方、点眼を始めれば生活習慣への配慮が不要になるわけではありません。
本や画面は目から30cm以上離す、近くを見る作業を続けすぎず休憩する、屋外で過ごす機会を確保する、といった対策が基本になります。特に屋外活動は近視の発症予防の観点でも大切です。すでにある近視への進行抑制治療と、同じ効果として数値を置き換えないようにします。
学校薬剤師として話すなら、「スマホは悪いから禁止」だけで終わらせず、学習端末や読書も含めて、距離と連続時間を考える伝え方にしたいですね。授業でも宿題でも目を使う以上、現実に続けられる工夫が必要です。
例えば、顔が画面に近づいたら姿勢を整える、学習の区切りで遠くを見る、休み時間に外へ出る機会を作る。家庭と学校で同じ方向の声かけができれば、子どもも取り組みやすくなります。
目の健康を、子どもの努力だけの問題にしないことも大切です。机や椅子の高さ、照明、画面の置き方など、大人が整えられる環境も一緒に見直したいところです。
リジュセアについてよくある質問
点眼すると近視は治りますか?
近視の進行を抑える薬です。すでにある近視を元に戻したり、裸眼視力を回復させたりすることを目的とした薬ではありません。眼鏡などが必要かどうかは、別に眼科で判断します。
市販の目薬と同じように選べますか?
一般的な市販の疲れ目用点眼薬と同じように自己選択する治療ではありません。まず眼科で近視の診断と適応の判断を受け、指示に従って使用します。
点眼していても度数が進んだら、意味がないのでしょうか?
進行抑制は、必ず進行がゼロになるという意味ではありません。1回の検査や日々の見え方だけで結論を出さず、経過を見て評価します。効果が認められない場合は漫然と継続せず、医師が方針を検討します。
家族やきょうだいで共有してもよいですか?
共有しません。一人ひとりで近視の状態や適応が異なりますし、点眼容器もその回限りの使用です。薬が余った場合も、他の人へ渡さず相談してください。
いつまで続けるのでしょうか?
一律に何歳まで、何か月で終了と決められるものではありません。近視の進行状況や治療効果を確認して判断します。終える時期を含めて眼科で相談し、自己判断で中断しないようにします。
しぐのひとこと|薬の話を、日々の生活につなげたい
今回の韓国での承認は、子どもの近視に対して、進行そのものに働きかける治療の選択肢が海外にも広がったニュースです。
薬局で大切にしたいのは、承認の話を伝えたあとです。「毎晩きちんと使えそうか」「朝にまぶしさはないか」「ほかの薬を買うときに伝えられるか」「費用を含めて続け方を理解しているか」。こうした具体的な確認が、家庭での治療を支えます。
学校健診で見つかった視力低下を受診につなぎ、必要な矯正と近視の進行管理を考え、家庭での目の使い方も見直す。その流れの中で、薬剤師も相談しやすい存在でありたいですね。
参考・確認先
- 韓国参天製薬:2026年10月26日付承認取得発表(韓国語PDF)
- 参天製薬:国内承認取得
- 参天製薬:国内発売のお知らせ
- PMDA:リジュセアミニ点眼液0.025%・電子添文等
- ORANGE試験原著(PubMed)
- 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定・眼科学的検査の見直し
- 厚生労働省:令和8年6月19日付疑義解釈等
- 厚生労働省:こどもの近視予防対策
この記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の開始・変更・終了は、眼科で個々の状態を確認して判断します。


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