
こんばんは、薬剤師のしぐ。
毎日使ってきた糖尿病の注射薬が販売終了になる。患者さんにとっては、「次は何を使うの?」「今ある薬は使ってよいの?」という不安につながるニュースです。
GLP-1受容体作動薬のビクトーザ皮下注18mgは、2026年11月末をめどに出荷終了となり、流通在庫の消尽をもって販売終了となることが案内されています。経過措置期間は2027年3月末日で満了予定です。ここで混同したくないのが、出荷終了の時期と、実際に薬局で入手できなくなる時期、そして保険診療上の経過措置期限は、それぞれ意味が違うということです。
今回は、終了までのスケジュール、メーカーが挙げる代替治療候補、薬局での切り替え支援をまとめます。単に「薬を変更する」で終わらせず、患者さんが次の治療を続けられるところまで確認したいですね。
※2026年11月2日時点の公開情報を基に整理しています。出荷・販売終了日程は下記の糖尿病リソースガイドによるメーカー発表の報道で確認しました。メーカー案内PDFは参照先を掲載していますが、本稿作成時には本文を直接取得できていません。個別の在庫状況と最終的な取扱いはメーカー・卸にご確認ください。
ビクトーザの出荷終了はいつ?3つの時点を整理
| 項目 | 案内されている内容 | 薬局での受け止め方 |
| 出荷終了 | 2026年11月末をめど | メーカーからの供給が終了する見込み |
| 販売終了 | 流通在庫の消尽をもって終了 | 卸や薬局の在庫によって入手可能な時期は異なる |
| 経過措置期間 | 2027年3月末日満了予定 | その日まで供給されるという意味ではない |
11月末までは必ず入手できる、とは限らない
「11月末めど」という情報だけを見て、月末までは従来どおり確保できると思い込むのは避けたいところです。発注したい数量と卸が供給できる数量は一致するとは限らず、薬局ごとの在庫にも差があります。
処方箋を受け取ってから確認すると、次の診察まで薬が足りるか分からない、処方医へすぐ連絡できない、といった事態になりかねません。継続患者さんの次回来局日と手元の残量を把握し、必要なら次の処方が出る前から処方元に相談する。この段取りが大切です。
経過措置期限は供給保証の期限ではない
経過措置期間が2027年3月末まで予定されていても、そこまで購入できるという保証はありません。流通在庫が先に尽きれば、期限より前に切り替えが必要になります。
逆に、出荷終了の案内を見た患者さんが、現在処方されている薬を自己判断で中止するのも問題です。手元の薬をいつまで使い、次の薬をいつ始めるかは、処方医の指示を確認します。薬の使用期限や保管状態も別途確認が必要で、「販売終了だから手元の薬をすぐ廃棄する」と説明しないようにしたいですね。
なぜ販売終了?公表内容と推測を分ける
2025年10月のメーカー案内では、諸般の事情により2026年後半をめどに出荷終了する予定が示され、2026年以降の順次変更が依頼されていました。今回の情報は、その時期が2026年11月末めどに具体化したものです。
ここから「薬の効果が否定された」「使うと危険だから販売終了になる」と結論づけることはできません。国内の終了理由について、公表資料以上の事情を推測して患者さんに伝えることは避けます。
患者さんへの最初の説明は、供給が終了する予定であること、治療を続けるために次の薬を相談する必要があること、自己判断で中断しないこと。この3点を落ち着いて伝えるのがよさそうです。安全性の相談を受けた場合は、今回の販売終了の話と、その患者さんに起きている症状の評価を分けて対応します。
ビクトーザはどんな薬?「18mg」は1回量ではない
ビクトーザの有効成分はリラグルチドです。国内では2型糖尿病に使用するGLP-1受容体作動薬で、毎日皮下注射する製剤です。インスリンとは異なる薬であり、インスリンが必要な患者さんで、その代わりとして自己判断で置き換えるものではありません。
販売名の「18mg」は1キット中の薬物量を表しており、1回に18mgを注射するという意味ではありません。切り替え先の製品でも、箱に書かれた規格と実際の1回投与量を区別する必要があります。
ビクトーザの成人の用法・用量は、1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量、0.9mgを維持用量とします。患者さんの状態に応じて増減し、0.9mgで効果不十分な場合には、1週間以上の間隔で0.3mgずつ最高1.8mgまで増量できます。
ただし、この数字を次の薬へそのまま当てはめることはできません。リラグルチドとセマグルチドは成分が異なり、投与頻度や吸収の条件も違います。「同じGLP-1受容体作動薬だから同じmgでよい」と考えないことが、切り替え時の基本です。
ビクトーザのダイアル変更や操作で薬局が対応した経験は、以前のビクトーザのダイアル変更・空打ち・日数計算の記事でも紹介しています。こちらは過去の実務記録で、当時の薬価や製品状況を含むため、現在の処方判断には最新の電子添文・資材を使ってください。


代替薬候補はオゼンピックとリベルサス
メーカーが挙げる代替となる治療法の候補は、オゼンピック皮下注2mgとリベルサス錠です。どちらもセマグルチドを有効成分としますが、注射薬と内服薬では日々の使い方が大きく異なります。
| 製品 | 有効成分 | 投与方法の特徴 | 切り替え時に確認したい点 |
| ビクトーザ | リラグルチド | 1日1回皮下注射 | 現在の投与量、最終使用日、残量 |
| オゼンピック | セマグルチド | 週1回皮下注射 | 投与曜日、開始量、操作方法 |
| リベルサス | セマグルチド | 1日1回経口投与 | 空腹時の服用、水量、服用後の待ち時間 |
この表は使い方の整理であり、効果が同等になる換算表ではありません。候補として示されていることと、その患者さんに適した処方であることは別です。血糖管理、体重の推移、食事摂取、既往歴、併用薬、生活リズム、希望などを踏まえて処方医が判断します。
また、候補の薬が掲載されていても、必要な規格・数量をその時点で確保できるとは限りません。処方変更を相談する際は、薬局側で調達の見通しも確認しておきたいですね。
オゼンピックへ切り替えるときの注意点
「毎日」から「週1回」へ、習慣ごと変える
毎日の注射が習慣になっている患者さんでは、週1回への変更を口頭で伝えるだけでは不十分なことがあります。薬の置き場所や朝の行動が変わらないままだと、以前と同じように注射しようとする可能性があるためです。
初回の投与日と毎週の投与曜日を具体的に決め、薬袋やカレンダーなどで確認できるようにします。患者さんには「次は何曜日ですか」「明日は注射しますか」と、自分の言葉で説明してもらうと理解を確認しやすくなります。
製品名の2mgを1回投与量と取り違えない
オゼンピック皮下注2mgも、販売名の規格がそのまま1回の処方量になるわけではありません。ペン全体の薬物量、1回量、投与頻度を分けて説明します。
通常の成人の承認用法では、週1回0.25mgから開始し、4週間後に0.5mgへ増量します。0.5mgが維持用量で、状態に応じて増減し、0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合は週1回1.0mgまで増量できます。これは承認用法の概要であり、ビクトーザからの個別の切り替え指示を示すものではありません。
最終使用日と新しい薬の開始日を明確にする
ビクトーザをいつまで使い、オゼンピックをいつから使うかが曖昧だと、重複使用や予定外の中断につながります。残薬がある場合も含めて処方医の指示を確認し、患者さんの手元に日付で残します。
さらに、注射器の見た目が似ていても操作を同じと決めつけず、新しい製品の説明書に沿って練習します。投与し忘れた場合の対応、保管方法、使用開始後の取扱いも製品ごとに再確認します。

リベルサスへ切り替えるときの注意点
注射がなくなる代わりに、服用条件が加わる
「飲み薬なら簡単」と考えたくなりますが、リベルサスは服用条件を守ることが重要です。1日の最初の食事・飲水の前、空腹の状態で、約120mL以下の水とともに1錠を服用します。服用時と服用後少なくとも30分は、飲食と他の薬の経口摂取を避けます。
コーヒーやお茶を先に飲む、ほかの朝の薬とまとめて飲む、飲んですぐ朝食を取る、といった日常の習慣を具体的に確認します。飲めるかどうかを判断するには、起床から出勤・朝食までの流れを聞く方が役立つことがあります。
割る・砕く・まとめて包装する前に確認する
リベルサスは分割・粉砕・かみ砕いて服用しません。湿気への配慮も必要で、PTPシートから取り出すタイミングを含め、最新の電子添文や製品資材に沿って扱います。ほかの内服薬と同じ感覚で一包化を進めないことが大切です。
成人の通常の承認用法では、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与後に7mgへ増量します。7mgが維持用量で、7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合は14mgまで増量できます。こちらもビクトーザとの用量換算ではなく、患者さんごとの開始量・開始日は処方医の指示を確認します。
薬局で進めたい切り替え準備
まずは継続患者と残量を把握する
直近の処方歴から継続中の患者さんを確認し、現在の1日量、手元の本数、使用中のペンの残量、次回受診予定を整理します。「前回何本渡したか」だけで使用終了日を決めず、実際の使用状況を聞くことが重要です。
薬局の在庫と患者さんの残薬は別に管理します。在庫が少ないからといって患者さんの薬も直ちに尽きるとは限らず、逆に薬局に在庫があっても、患者さんが受診前に使い切ってしまうことはあり得ます。
処方元には変更の相談に必要な情報をそろえる
連絡時は、終了日程だけを伝えるより、患者さんの残量でいつ頃まで継続できるか、次回診察まで足りるか、候補薬を調達できるかまで整理すると話が進みやすくなります。朝の服薬が多い、毎日の注射を家族が支援している、曜日の管理に不安がある、といった生活情報も処方選択の参考になります。
薬局で別成分に自己判断で変更することはできません。疑義照会など必要な手順を踏み、処方内容と切り替えの指示を確認します。
新旧の薬が手元にある期間を重点的に確認する
切り替え後も旧薬が冷蔵庫に残っていると、患者さんや家族が使い分けを誤るおそれがあります。旧薬の扱いを確認し、新薬と区別して管理します。家族や訪問看護師などが支援している場合は、誰がいつ投与するか、情報が共有されているかも確認します。
服薬指導の記録には、新薬の名称・1回量・頻度に加え、旧薬の終了日、新薬の開始日、患者さんの理解状況、残薬への対応を残すと、次の担当者が状況を把握しやすくなります。

切り替え後は血糖と体調の変化を確認
変更後は、血糖値の推移だけでなく、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲低下などが生活に影響していないかを確認します。食べられない、水分を取れない状態が続く場合は、脱水などにつながる可能性があるため、早めに医療機関へ相談します。
インスリンやSU薬などを併用している患者さんでは、低血糖への注意も必要です。食事量が変わったときの対応、低血糖時にどうするか、どこへ連絡するかを具体的に確認します。患者さんが併用薬を自分で減らしたり中止したりしないよう、必要な調整は処方医と相談します。
持続する激しい腹痛など、急性膵炎を疑う症状がある場合は、単なる胃腸症状として様子を見続けず、速やかな受診につなげます。切り替え前からある症状と、変更後に新しく出た症状を分けて聞くと、医師へ情報提供しやすくなります。
フォローの時期は患者さんの状態に合わせて決めます。「何かあったら連絡してください」だけで終えず、連絡先と相談してほしい症状を伝え、必要なら次の診察を待たずに状況を確認したいですね。
よくある質問
Q.2026年11月末に、すべての薬局からなくなりますか?
一律になくなる日を示したものではありません。出荷終了は11月末をめどとされ、販売終了は流通在庫の消尽時です。薬局・卸ごとの状況を確認する必要があります。
Q.2027年3月末までなら同じ薬を続けられますか?
経過措置期限まで供給される保証はありません。手元の残量と調達状況を確認し、処方医と早めに切り替えを相談してください。
Q.手元のビクトーザは、今すぐ中止するべきですか?
販売終了の情報だけを理由に自己判断で中止しないでください。現在の薬をいつまで使い、次の薬をいつから始めるかを処方医・薬剤師に確認します。
Q.オゼンピックかリベルサスに必ず変更するのですか?
メーカーが示すのは代替治療の候補です。ほかの治療法を含め、患者さんの状態と生活に合う方法を処方医が判断します。
Q.ビクトーザと同じmg数にすればよいですか?
成分や剤形、投与頻度が異なるため、同じ数字をそのまま当てはめることはできません。新しい処方量と開始日を必ず確認します。
Q.リラグルチドを含むほかの製品も今回終了しますか?
今回整理した対象はビクトーザ皮下注18mgです。同成分を含む別製品へ、終了日程をそのまま当てはめないでください。製品ごとの通知を確認します。
まとめ:薬が切れる前に、次の治療と使い方を確認しよう
ビクトーザは2026年11月末めどに出荷終了、流通在庫がなくなり次第販売終了、経過措置は2027年3月末日満了予定です。3つの時点を区別して理解しておくことが大切です。
薬局で進めたいのは、対象患者さんの残量把握、処方元との切り替え相談、新薬の使い方の再確認、そして変更後のフォローです。毎日注射から週1回注射へ、あるいは服用条件のある内服薬へ。薬の名前だけでなく、毎日の行動も変わります。
患者さんが「次に何を、いつ、どのくらい使うか」を説明できるところまで確認する。販売終了への対応でも、薬剤師として大切にしたいのは、そこだと思います。
参考・確認先
- ノボ ノルディスク ファーマ:ビクトーザ販売終了の案内(メーカーPDFへのリンク。医療関係者確認画面を経由する場合があります)
- 糖尿病リソースガイド:2026年10月6日、メーカー発表に関する報道(日程・代替候補の確認元)
- 日本糖尿病学会:2025年10月の販売終了に伴う案内
- PMDA:ビクトーザの電子添文・患者向医薬品ガイド
- 厚生労働省:オゼンピックの用法・用量
- PMDA:リベルサスの電子添文


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