梅毒治療薬ステルイズの供給不足が長期化|出荷再開は2027年後半?妊婦への優先使用を3学会が要請

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梅毒治療薬ステルイズの出荷停止と供給不足を表現したイメージ

こんばんは!薬剤師のしぐです。

今回は、最近日常的に話題になる、医薬品の供給のお話です。

梅毒治療に使用される持続性ペニシリン製剤「ステルイズ水性懸濁筋注」の供給不足が、想像以上に長期化しそうです。

ファイザーは2026年7月、ステルイズ240万単位シリンジについて、現在のメーカー在庫がなくなり次第「出荷停止」となることを公表しました。

さらに、出荷再開は現時点で「2027年後半」の見込み。

すでに出荷停止が続いている60万単位シリンジについては、再開時期そのものが未定です。

ステルイズは、特に妊娠期梅毒において重要な治療選択肢です。そのため、日本化学療法学会・日本感染症学会・日本性感染症学会は、残っている240万単位シリンジを、まず妊婦へ優先して使用するよう協力を求めています。

今回は、ステルイズの供給状況、長期化している理由、梅毒治療への影響、代替治療、そして保険薬局で確認したいポイントを整理します。

※本記事は2026年9月9日時点の公表情報をもとに作成しています。供給状況は変化するため、処方・発注時には最新情報をご確認ください。

ステルイズとは?

ステルイズ水性懸濁筋注は、ベンジルペニシリンベンザチン水和物を有効成分とする持続性ペニシリン製剤です。

国内では「神経梅毒を除く梅毒」に使用されます。

一般的な投与方法は次のとおりです。

対象主な用法・用量
成人・13歳以上の早期梅毒240万単位を単回筋肉内注射
成人・13歳以上の後期梅毒240万単位を週1回、計3回筋肉内注射
2歳以上13歳未満成人の投与量をもとに年齢・体重で適宜減量
2歳未満の早期先天梅毒・早期梅毒体重1kgあたり5万単位を単回筋肉内注射

早期梅毒では1回の筋肉内注射で治療できる点が大きな特徴です。

一方、神経梅毒・眼梅毒・耳梅毒には適応がなく、別の治療が必要です。用法・用量は病期や年齢によって異なるため、実際の治療では電子添文と最新の診療ガイドラインを確認します。

参考:PMDA・ステルイズ電子添文

ステルイズの供給状況

2026年9月時点の状況を整理すると、次のようになります。

規格現在の供給状況出荷再開時期
60万単位シリンジ出荷停止を継続未定
240万単位シリンジメーカー在庫消尽後に出荷停止2027年後半の見込み

ここで注意したいのは、240万単位シリンジが、発表時点ですべてなくなっているという意味ではないことです。

メーカーからは「現在の在庫をもって、在庫消尽後に出荷停止」と案内されています。

ただし、在庫がなくなる時期は医療機関や卸によって異なります。地域によっては、すでに入手が難しくなっている可能性があります。

また、「2027年後半」は確定した再開日ではなく、2026年7月時点の見込みです。製造や薬事手続きの進捗によって、今後さらに変更される可能性があります。

参考:ファイザー「ステルイズ240万単位シリンジの出荷停止に関するお詫び(追報)」

なぜ供給不足が長期化しているのか

ステルイズの海外製造と供給再開の遅れを表現したイメージ

ファイザーによると、240万単位シリンジでは、2025年11月に海外製造所の製造機器が故障しました。

その後、機器の修理、製造エリアの再無菌化、製造工程の確認が進められ、当初は2026年末頃の出荷再開が見込まれていました。

しかし、海外製造所の製造工程について、米国で薬事手続きが必要となる変更が発生。

品質保証の観点から、薬事手続きが完了するまで、日本を含む各国向け製品の出荷を保留することになりました。

つまり、単なる「製造が追いつかない」という不足ではありません。

  • 製造機器の故障
  • 製造エリアの再無菌化
  • 製造工程の確認
  • 米国での薬事手続き
  • 日本への輸入後の後続工程

これらが重なり、供給再開まで長い時間が必要になっています。

同じ製造ラインで各国向けのステルイズを製造しているため、日本だけでなく、海外でも供給不足が発生しています。

妊婦への使用を最優先に

妊娠期梅毒でステルイズを優先使用する考え方を表現したイメージ

今回、最も大切なポイントが「妊婦への優先使用」です。

日本化学療法学会・日本感染症学会・日本性感染症学会は、ステルイズ240万単位シリンジの在庫が残っている間は、まず妊婦への使用を優先するよう求めています。

妊娠期梅毒は、母体だけの問題ではありません。

胎盤を通じて胎児へ感染すると、先天梅毒につながる可能性があります。ステルイズは、先天梅毒を予防する治療として最も根拠のある薬剤とされています。

ただし、ステルイズで母体の治療を完遂しても、先天梅毒を完全に予防できるとは限りません。治療後も母体と出生児を適切に評価し、継続してフォローする必要があります。

3学会は、残存在庫について、次の順序を基本としています。

  1. まず妊婦への使用を優先する
  2. そのうえで、28日間の内服治療完遂が難しい患者を検討する
  3. 確実な治療機会を失う可能性が高い患者について個別に判断する

これは「妊婦以外には使用しない」という意味ではありません。

患者ごとの緊急性、内服治療の継続可能性、代替困難性などを評価し、限られた在庫を適正に使用するという考え方です。

参考:3学会合同・供給制限下における適正使用・適正発注へのお願い

非妊婦の成人梅毒ではアモキシシリンを検討

神経梅毒を除く非妊婦の成人梅毒では、供給制限下の第一選択として、アモキシシリンによる治療が示されています。

一般的な投与方法は、次のとおりです。

アモキシシリン水和物500mgを1日3回、28日間経口投与

ただし、感染部位、年齢、腎機能、妊娠の有無などを確認し、電子添文と最新のガイドラインに沿って判断します。

供給不足だからといって、投与回数を減らしたり、治療期間を短縮したりすることは適切ではありません。

一方で、必要以上に長期間投与したり、不要な重複処方を行ったりすることも避ける必要があります。

アモキシシリン自体も一部の製品・規格で限定出荷が続いているため、治療を開始する前に28日間の治療を完遂できる量を確保できるか、医療機関と保険薬局で確認することが重要です。

アモキシシリンも確保できない場合は?

アモキシシリンの確保が難しい非妊婦では、患者背景を確認したうえで、第二選択薬であるミノサイクリンが検討される場合があります。

3学会の文書では、次の投与方法が示されています。

ミノサイクリン塩酸塩100mgを1日2回、28日間経口投与

ただし、ミノサイクリンは妊婦には使用しません。

また、副作用、禁忌、相互作用などを確認するとともに、治療後の血清学的フォローを確実に行う必要があります。

ペニシリンGカリウムへ単純に変更してはいけない

ステルイズと注射用ペニシリンGカリウムは、同じ「ペニシリン」という名前が入っていますが、単純に置き換えられる薬ではありません。

両剤では、次の点が異なります。

  • 適応菌種
  • 適応症
  • 用法・用量
  • 投与経路や投与方法
  • 薬物動態
  • 作用の持続時間

特に注射用ペニシリンGカリウムは、神経梅毒・眼梅毒・耳梅毒や先天梅毒の治療に不可欠な薬剤です。

ステルイズの代替として安易に使用すると、本来必要とする患者への供給にも影響する可能性があります。

ステルイズ240万単位シリンジについて、メーカーから了承された直接的な代替製品は示されていません。

シリンジの分割使用も不可

供給が厳しいと、「240万単位シリンジを分けて使えないか」と考えてしまうかもしれません。

しかし、供給不足を理由にプレフィルドシリンジを分割したり、複数の患者に使用したりしてはいけません。

他の注射剤との混合や、自己判断による置換も避ける必要があります。

限られた在庫を有効に使うことと、承認された方法から外れた使い方をすることは別問題です。

保険薬局で確認したいポイント

梅毒治療薬の適正使用に向けた医療機関・薬局・卸の連携イメージ

ステルイズは医療機関で使用される注射剤ですが、供給不足の影響は保険薬局にも及びます。

特に、代替となるアモキシシリンの処方が増加する可能性があります。

1.28日分を確保できるか

梅毒治療としてアモキシシリンが処方された場合、治療途中で薬がなくならないよう、処方日数分を確保できるか確認します。

不足する場合は、患者さんが来局してから初めて気づくのではなく、可能な範囲で事前に医療機関、卸、系列薬局などと調整したいところです。

2.用法・用量を確認する

供給不足を理由に、処方量や投与回数が意図せず変更されていないか確認します。

梅毒治療では、一般的な感染症に対するアモキシシリン処方と投与期間が大きく異なることがあります。

処方意図が不明な場合は、病名や治療目的を確認し、必要に応じて疑義照会を行います。

3.腎機能を確認する

アモキシシリンは主に腎排泄される薬剤です。

高齢者や腎機能が低下している患者では、腎機能、投与量、投与間隔について確認が必要になります。

4.服薬アドヒアランスを支援する

1日3回、28日間の内服は、患者さんにとって決して簡単ではありません。

  • 飲み忘れはないか
  • 自己判断で中止していないか
  • 発疹や下痢などが出ていないか
  • 残薬が発生していないか
  • 最後まで服用できる見通しがあるか

こうした点を確認し、治療完遂を支援することが保険薬局の重要な役割になります。

5.買い込みや重複発注を避ける

供給不安があるからといって、通常使用量を大きく超える発注や、複数の卸への重複発注を行うと、地域全体の偏在を招きます。

直近の使用量、治療中の患者数、具体的な処方予定に基づき、必要量を適正に発注することが求められています。

治療後のフォローも重要

梅毒は、薬を投与して終了ではありません。

治療後は、原則として同じ測定方法による定量RPRの推移と臨床経過を確認し、治療効果を評価します。

梅毒トレポネーマ抗体は治療後も陽性が続くことがあるため、単独では治癒判定に使用できません。

また、次の対応も重要です。

  • パートナーの検査と必要な治療
  • 再感染予防の説明
  • 治療完遂の確認
  • 適切な時期の血液検査
  • 妊婦では母体と出生児の評価・追跡

検査値が陽性のままという理由だけで、漫然と再治療を繰り返さないことも大切です。

まとめ|ステルイズ「2027年後半」は現時点の見込み

ステルイズの供給不足は、一時的な欠品ではなく、長期化する可能性が高い状況です。

今回のポイントをまとめます。

  • 240万単位はメーカー在庫消尽後に出荷停止
  • 240万単位の再開は2027年後半の見込み
  • 60万単位は出荷停止が継続し、再開時期は未定
  • 残っている240万単位は、まず妊婦への使用を優先
  • 非妊婦の成人梅毒ではアモキシシリン内服を検討
  • アモキシシリンも一部製品・規格で供給制限がある
  • ペニシリンGカリウムへの単純な置換はできない
  • プレフィルドシリンジの分割使用は不可
  • 保険薬局では治療完遂に必要な薬剤量の確保が重要

「2027年後半」は、あくまで2026年7月時点の見込みです。

今後も供給状況が変わる可能性があるため、メーカー、卸、学会、厚生労働省などが公表する最新情報を継続して確認する必要があります。

限られた薬剤を囲い込むのではなく、妊婦をはじめ、本当に代替が難しい患者さんへ確実に届ける。そのためには、医療機関、薬局、卸が供給状況を共有し、地域全体で適正使用と適正発注を考えていく必要がありそうです。

ではではー、しぐでした


FAQ

ステルイズ240万単位は、すでに全国で完全に出荷停止されていますか?

メーカーの案内は「現在の在庫がなくなり次第、出荷停止」です。在庫状況は卸や医療機関によって異なるため、地域によって入手可能性が異なります。

ステルイズ240万単位はいつ再開しますか?

2026年7月時点では、2027年後半に出荷再開となる見込みです。ただし確定した再開日ではなく、薬事手続きや製造状況によって変更される可能性があります。

ステルイズ60万単位はいつ再開しますか?

出荷停止が継続しており、再開時期は未定です。

なぜ妊婦が優先されるのですか?

妊娠期梅毒では胎児への感染により、先天梅毒が生じる可能性があります。ステルイズは先天梅毒予防について最も根拠のある治療とされているため、残存在庫の優先使用が求められています。

ステルイズがなければアモキシシリンで治療できますか?

神経梅毒を除く非妊婦の成人梅毒では、アモキシシリン500mgを1日3回、28日間投与する方法が示されています。妊婦や特殊病態では対応が異なるため、専門医との連携が必要です。

注射用ペニシリンGカリウムで代用できますか?

単純な代用はできません。ステルイズとは適応症、用法・用量、薬物動態などが異なります。特に神経梅毒、眼梅毒、耳梅毒、先天梅毒では重要な薬剤であり、専門的な判断が必要です。

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