HPVワクチン、日本はまだ遅れている。子宮頸がんを「予防できるがん」にするために思うこと

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こんばんは!薬剤師のしぐです。

「HPVワクチンって、実際どうなの?」

薬局で働いていても、そして子どもたちの健康に関わっていても、このテーマはとても難しいなと感じます。

副反応について大きく報道された時期があり、接種について不安を感じた方も少なくないと思います。

実際、日本のHPVワクチンには、かなり複雑な歴史があります。

だからこそ、

「とにかく打ちましょう!」

だけで終わらせるのも、少し違うと思っています。

それでも、いろいろなデータを見て、薬剤師として考えたとき。

しぐはHPVワクチンの接種を推奨しています。

今回は、その理由について少し詳しく書いてみたいと思います。


そもそもHPVワクチンは何のためのワクチン?

HPVとは、**ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus)**のこと。

HPVにはたくさんの種類がありますが、その一部は子宮頸がんなどの原因になります。

つまりHPVワクチンは、

「がんそのものに対するワクチン」というより、がんの原因となるHPVへの感染を予防するワクチン

という位置づけです。

現在、日本で定期接種として使用されている9価HPVワクチン「シルガード9」は、子宮頸がんの原因となる複数のHPV型に対する予防効果が期待されています。

HPVワクチンは何か特別なワクチンのように感じられることがありますが、日本では小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象とした定期接種です。

赤ちゃんのころに受けるBCGやMRワクチン、日本脳炎ワクチンなどと同じ「定期接種」のひとつなんですよね。


日本のHPVワクチン接種率は、まだまだ低い

今回の資料を見て、改めて驚いた数字があります。

2025年度上半期時点のHPVワクチン累積初回接種率は、

12歳 4.3%
13歳 14.4%
14歳 31.5%
15歳 34.8%
16歳 53.9%

でした。

もちろん、年齢が上がるにつれて接種率は高くなっています。

高校1年生相当では2021年度23.8%だったものが、2024年度には54.9%まで増えており、日本でも少しずつ接種が進んできています。

これはとても良い変化だと思います。

ただ。

世界と比べると、まだかなり差があります。

資料に掲載されている2024年の海外データでは、15歳までのHPVワクチン初回接種率は、

  • カナダ:女性86%、男性81%
  • オーストラリア:女性83%、男性81%
  • イギリス:女性78%、男性73%
  • アメリカ:女性77%、男性78%

となっています。

男女とも70〜80%を超えている国が珍しくありません。

WHOは子宮頸がんを公衆衛生上の問題として「排除」するため、2030年までに15歳までの女子の90%がHPVワクチン接種を完了することを世界的な目標のひとつに掲げています。

そう考えると、日本はやはり「まだ追いついている途中」と言わざるを得ません。


「ワクチンで本当にがんが減るの?」という疑問

ここが、とても大事なところです。

ワクチンですから、

「HPVへの感染を減らせそう」

というだけではなく、

最終的に本当に子宮頸がんそのものが減るのか?

そこが知りたいですよね。

そして現在、HPVワクチンを早くから導入してきた国では、その答えがかなり見えてきています。


イギリスでは子宮頸がんが大幅に減少

HPVワクチンを2008年から導入しているイングランドでは、大規模な追跡研究が行われています。

その結果、12〜13歳でHPVワクチンを接種した世代では、接種していなかった世代と比較して、子宮頸がんの発症が約87%少なかったことが報告されています。

87%。

これは、かなり大きな数字です。

HPVワクチンが普及してから年月が経ち、ようやく、

**「感染が減った」
「前がん病変が減った」

だけではなく、

「実際に子宮頸がんそのものが減った」**

というところまでデータが積み上がってきたわけです。

さらに2026年には、イングランドでHPVワクチン接種が、2024年末までに約200人の子宮頸がん死亡を防いだと推計する研究も報告されています。

ワクチンによって「将来のがんを予防する」という考え方が、現実の数字として見え始めています。


オーストラリアでは「子宮頸がんをなくす」ことを目指している

HPVワクチン先進国としてよく知られているのがオーストラリアです。

オーストラリアではHPVワクチンの接種率が高く、2023年には15歳までの接種率が女性84.2%、男性81.8%でした。

そして現在は、

「子宮頸がんをいかに治療するか」ではなく、「子宮頸がんを社会からほぼなくす」

というところを目標にしています。

これは、本当にすごいことだと思います。

もちろん、子宮頸がんを減らすためにはワクチンだけでは足りません。

HPVワクチンに加えて、

子宮頸がん検診

も非常に重要です。

WHOも、

「ワクチン90%」
「検診70%」
「前がん病変・がんへの治療90%」

という90-70-90戦略を掲げています。

つまり、

ワクチンで感染を予防し、検診で早く見つけ、必要な人をきちんと治療する。

この組み合わせで子宮頸がんを大きく減らそうとしているわけです。


では、なぜ日本はこんなに遅れてしまったのか

ここは、HPVワクチンについて語るうえで避けて通れません。

日本でもHPVワクチンは2013年4月に定期接種となりました。

ところが接種後にさまざまな症状を訴える方が報告され、大きく報道されるようになりました。

その後、2013年6月から国による積極的な接種勧奨が差し控えられることになります。

その状態が長期間続きました。

そして、積極的な接種勧奨が再開されたのは2022年4月

約8年半という非常に長い期間が空いています。

その結果、日本では一時期HPVワクチンの接種率が極端に低い世代が生まれました。2019年には接種率が1%未満だったと報告されています。

だから、

「海外ではHPVワクチンが当たり前なのに、日本人だけワクチンに理解がない」

みたいな単純な話ではないと思うんです。

日本には日本なりの経緯があります。

あの当時のニュースを覚えている保護者世代なら、

「子どもに打たせるのが怖い」

と思うのも、不思議ではありません。

今回の資料でも、HPVワクチンに不安を感じる理由として最も多かったのは**「ワクチン接種による副反応」51.0%、続いて「ワクチン接種の安全性」29.2%**でした。

この数字を見ると、

「どうして打たないの?」

ではなく、

「何が不安なのかをきちんと聞く」

ことが大切なんだと思います。


それでも、しぐはHPVワクチン接種を推奨します

ここまで書いたように、HPVワクチンを巡る日本の歴史は決して単純ではありません。

ワクチンに限らず、医薬品に「絶対安全」はありません。

副反応が起こる可能性もあります。

だから、

「何も心配ないから打てばいい」

とは、しぐは言いたくありません。

一方で、薬剤師として現在までに積み上がってきたデータを見ると、

HPV感染を防ぐことができる。
前がん病変を減らすことができる。
そして実際に子宮頸がんそのものを大きく減らしている。

ここまで分かってきています。

だから現在のエビデンスを踏まえて考えるなら、

しぐはHPVワクチン接種を推奨します。

特に、HPVに感染する前の若い世代で接種することには大きな意味があります。


「性行為をする年齢だから打つ」ではありません

HPVワクチンの話になると、

「まだ小学生なのに必要なの?」

と感じる方もいるかもしれません。

でも考え方は逆です。

将来HPVに感染する可能性があるからこそ、

感染する前に免疫をつけておく。

それがワクチンです。

インフルエンザが流行してからワクチンを打つのではなく、流行する前に接種するのと考え方は同じです。

日本の定期接種対象が小学校6年生〜高校1年生相当の女子となっているのも、このためです。11〜14歳ではシルガード9を2回接種する方法もあります。


「打つ・打たない」を決める前に、正しい情報を知ってほしい

今回の資料には、個人的にとても興味深いデータが載っていました。

HPVワクチンについて、接種対象者や保護者が「信頼できる」と考える情報源で最も多かったのは、

医師からの情報

でした。

SNSにはたくさんの情報があります。

「HPVワクチンは絶対に危険」

という情報もあれば、

「何も考えず全員打つべき」

という情報もあります。

でも、医療はそのどちらかだけで語れるものではありません。

どんなメリットがあるのか。

どんな副反応があるのか。

接種しなかった場合にはどんなリスクが残るのか。

その両方を知ったうえで判断する。

そのために医師や薬剤師がいるのだと思っています。

不安なことがあれば、SNSだけで答えを探すのではなく、ぜひ医療従事者にも聞いてほしいです。


子宮頸がんは「予防できる可能性が高いがん」へ

少し前まで、

「ワクチンで将来のがんを防ぐ」

という話は、どこか遠い未来の話だったのかもしれません。

でも今は違います。

HPVワクチンを早くから導入した国で接種世代が大人になり、

実際に子宮頸がんが大きく減っている。

その結果が出始めています。

日本は、その流れから一度大きく遅れてしまいました。

でも2022年に積極的な接種勧奨が再開され、今回の資料を見ても、接種率は少しずつ回復してきています。

だからこそ、ここからが大切なんじゃないかなと思います。

ワクチンを過度に怖がるのでもなく。

逆に、リスクを何も説明せず勧めるのでもなく。

正しい情報を知ったうえで、自分自身、そして子どもの将来を考える。

HPVワクチンについて考えることは、

「今、病気にならないため」だけではありません。

10年後、20年後。

その子が大人になったときに、子宮頸がんになる可能性を少しでも下げるための選択でもあります。

いろいろと複雑な歴史があるHPVワクチンだからこそ、簡単には語れません。

それでも。

世界で積み上がってきたデータを見ていると、

「ワクチンで予防できる可能性のあるがんを、できるだけ予防する」

という考え方を、しぐは大切にしたいと思っています。

そして、その選択肢として。

しぐはHPVワクチンの接種を推奨します。

もちろん、ワクチンだけで子宮頸がんを完全に防げるわけではありません。

大人になってからは、子宮頸がん検診も忘れずに。

「ワクチン+検診」

この2つで、将来の子宮頸がんをできるだけ減らしていけたらいいですね。

ではでは、しぐでしたー

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