薬剤師のしぐです。
最近、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬が立て続けに販売されています。
しかも、JAKに関連する適応が関節リウマチから潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、真性多血症等血液疾患などなど。幅広いんですよね。
比較的新しい医薬品が多く、今後の免疫系疾患治療において注目の作用機序かと思われるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬。
まだはっきりとこの作用機序を理解できていない方。ここでまとめてみるの確認してみてください〜
ちなみに、JAK阻害薬の先駆けとして2013年に販売されたのがトファシチニブ〈ゼルヤンツ錠〉です。ここからパリシチニブ〈オルミエント錠〉、ペフィシチニブ〈スマイラフ錠〉、ウパダシチニブ〈リンヴォック錠〉と立て続けに抗リウマチ薬のJAK阻害薬が販売されています。
この【薬局2019.4Vol70:特集関節リウマチ】はJAK阻害薬を含めた関節リウマチの疾患・治療・各薬剤の特徴がしっかりまとめられた1冊となっていてすごく勉強になります!
DMARDs、bDMARDs、tsDMARDsなど各分類ごとに使いこなすポイントや要点がまとめられています。これまでも関節リウマチ治療薬についてのお勉強はそれなりにしてきましたが。
すごく綺麗にまとまっていてオススメの1冊となります。
今回まとめる内容も、この書籍を参考に書いてる部分が多数あります。
さらにさらに、見た目も、国試のときに勉強した黒本みたいで、オシャレですよね〜。4月号は黄色。他にも、各月で色が決まっていて並べるとキレイです。何をするにしても、こういったデザインって重要。何をするにもモチベーションになりますからね。
JAK(ヤヌスキナーゼ)とは
まず第一に、JAK:ヤヌスキナーゼ。名前の最後が〜アーゼなので、酵素であることはすぐわかります。
体内で炎症反応をおこす炎症性のサイトカインという物質があり、炎症性サイトカインの中にインターロイキン(IL)という物質がある。ILの伝達に必要な酵素の1つがヤヌスキナーゼ(JAK)です。
JAK阻害薬は炎症性サイトカインであるILの伝達に必要なJAKを阻害し、炎症などを引き起こす伝達を阻害することで関節リウマチ等の炎症症状を改善する作用をあらわす。またJAK阻害薬にはインターフェロン(IFN)などIL以外の炎症性サイトカインの伝達を阻害する作用も考えられています。
各JAK阻害薬の作用機序を添付文書からまとめるよ
そして、このJAKが体内でどんな反応に関係しているか。自分がパッと思いつくJAK阻害薬6種類の添付文書の作用機序から要点をまとめてみます!
JAK阻害薬①:ルキソリチニブ〈ジャカビ錠〉
骨髄線維症及び真性多血症の患者では多くの場合、JAK2遺伝子の変異等によるJAK2キナーゼの恒常的な活性化が認められている。ルキソリチニブは、in vitroで野生型及び変異型(V617F)のJAK2活性を阻害し、そのシグナル伝達を抑制した。
また、骨髄線維症における臨床症状の原因の一つと考えられているIL-6の細胞内シグナル伝達に関わるJAK1の活性を阻害した。変異型JAK2(V617F)を発現させたマウス腫瘍細胞株を移植したマウスにおいて、ルキソリチニブは脾臓重量を減少させ、炎症性サイトカインであるIL-6及びTNF-αの血中濃度の上昇を抑制した。
変異型JAK2(V617F)を発現するマウス由来骨髄細胞を移植し、赤血球数増加等の真性多血症様の症状を呈したマウスにおいて、ルキソリチニブは赤血球数、白血球数及び脾臓重量を減少させた。
では、このルキソリチニブ〈ジャカビ錠〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- 骨髄線維症、真性多血症ではJAK2の活性化がみられる
- JAK1を阻害することでIL-6の細胞内シグナル伝達を阻害する
- JAK2を阻害することで脾臓重量の減少、赤血球・白血球数の減少、IL-6、TNF-αの血中濃度上昇を抑制する
JAK阻害薬②:トファシチニブ〈ゼルヤンツ錠〉
トファシチニブは、JAKファミリーの強力な阻害薬であり、ヒトのキナーゼ群の中で高い選択性を示す。トファシチニブは、キナーゼアッセイでJAK1、JAK2、JAK3を阻害し、TyK2も軽度に阻害する。
細胞内では2分子のJAKが介在してシグナル伝達が行われるが、トファシチニブはJAK3又はJAK1に会合するヘテロ二量体受容体によるシグナル伝達を強力に阻害し、その機能的選択性はJAK2に会合するホモ二量体受容体によるシグナル伝達に対する阻害よりも高い。
JAK1及びJAK3の阻害により、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21を含む数種類の共通のγ鎖を有するサイトカイン受容体を介したシグナル伝達が遮断される。これらのサイトカインは、リンパ球の活性化、増殖及び機能発現に不可欠であることから、これらのシグナル伝達の阻害により免疫反応を様々な形で抑制できると考えられる。
また、JAK1に対する阻害作用により、IL-6やⅠ型IFNなど他の炎症誘発性サイトカインを介したシグナル伝達も抑制すると考えられる。より高用量では、JAK2ホモ二量体シグナル伝達の抑制を介したエリスロポエチンのシグナル伝達の抑制が生じる可能性がある。
このトファシチニブ〈ゼルヤンツ錠〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- JAK1とJAK3の阻害により、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21に関連するシグナル伝達を遮断する。これによりリンパ球に関連する免疫反応を抑制する。
- JAK1阻害によりIL-6、IFNに関連するシグナル伝達も抑制する。
- JAK2阻害によりエリスロポエチンのシグナル伝達を抑制する可能性がある。
JAK阻害薬③:パリシチニブ〈オルミエント錠〉
造血、炎症、免疫機能に関与する各種サイトカインや成長因子が受容体に結合する際にJAKが介在した細胞内シグナル伝達が行われる。細胞内シグナル伝達経路の中でJAK自体のリン酸化とともに対応するシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)がリン酸化される。
リン酸化されたSTATは核内に移行し、サイトカインに反応する遺伝子群の転写を亢進する。バリシチニブはJAK1及びJAK2活性を阻害し、STATのリン酸化及び活性化を抑制することによりシグナル伝達を阻害する。
バリシチニブはJAK1/JAK2の選択的かつ可逆的阻害剤であり、酵素阻害試験でJAK1、JAK2、TYK2及びJAK3活性を阻害し、その阻害作用のIC50はそれぞれ、5.9、5.7、53及び>400nMである(in vitro)
バリシチニブを投与した健康被験者の全血を用いたアッセイにおいて、IL-6により誘導されるSTAT3 リン酸化を用量依存的に阻害した。その阻害作用はバリシチニブ投与2時間後に最大になり、STAT3 リン酸化レベルは24時間後にほぼベースラインに戻った。IL-6(JAK1/JAK2 を介したシグナル伝達)又はトロンボポエチン(JAK2/JAK2 を介したシグナル伝達)のどちらで刺激した場合にも同様の阻害効果が認められた(in vitro)
このパリシチニブ〈オルミエント錠〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- 細胞内シグナル伝達経路はJAKのリン酸化→STATのリン酸化→STATが核内移行→サイトカインに反応する遺伝子群の転写を亢進
- JAK1、JAK2の阻害によりSTATのリン酸化、IL-6活性を抑制
- JAK2阻害によりトロンボポエチンでの活性も抑制
JAK阻害薬④:ペフィシチニブ〈スマイラフ錠〉
JAKファミリーは、免疫・炎症反応及び造血等に関与するサイトカインや成長因子の受容体の細胞内領域に会合しており、受容体下流の細胞内シグナル伝達において重要な役割を担っている。ペフィシチニブは、JAKファミリーを阻害し、炎症性サイトカインのシグナル伝達や細胞増殖を抑制する。
ペフィシチニブは、in vitroキナーゼアッセイにおいて、JAK1、JAK2、JAK3及びTYK2の活性を阻害し、そのIC50値はそれぞれ、3.92、5.01、0.71及び4.79nmol/Lである。
ペフィシチニブは、JAK1及びJAK3が介在するIL-2刺激によるヒト末梢血単核球からのIL-13、GM-CSF、IFN-γ、TNF-αの産生をそれぞれ、IC50値2.43、2.11、0.203及び15.7nmol/Lで抑制する。また、本薬は、ヒトCD4+T細胞及びCD8+T細胞において、IL-6のシグナル伝達をそれぞれ、IC50値49.6及び33.5nmol/Lで抑制し、IFN-αのシグナル伝達をそれぞれ、IC50値23.4及び25.4nmol/Lで抑制する
ペフィシチニブは、JAK1及びJAK3が介在するIL-2刺激によるヒト末梢血T細胞の増殖を抑制し、そのIC50値は18.2nmol/Lである。一方で、JAK2のみが介在するエリスロポエチン刺激によるヒト赤白血病細胞株の増殖も抑制するが、そのIC50値は248nmol/Lである。
ペフィシチニブは、ラット関節炎モデルにおいて、関節腫脹や骨破壊の進行を抑制する。
このペフィシチニブ〈スマイラフ錠〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- JAKファミリーを阻害することで、炎症性サイトカインのシグナル伝達や細胞増殖を抑制する
- JAK1、JAK3阻害によりIL-2によるIL-13、GM-CSF、IFN-γ、TNF-αの産生、さらにIL-6のシグナル伝達を抑制する
- JAK2阻害でエリスロポエチン刺激による赤血球・白血球の増殖を抑制する
JAK阻害薬⑤:ウパダシチニブ〈リンヴォック錠〉
ヤヌスキナーゼ(JAK)は炎症応答、造血、及び免疫監視を含む広範囲の細胞プロセスに関与するサイトカインまたは増殖因子シグナルを伝達する重要な細胞内酵素である。JAKファミリーの酵素には、JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2があり、シグナル伝達及び転写活性化因子(STAT)のリン酸化及び活性化に関わる。
JAK1は炎症性サイトカインシグナルにおいて重要であるが、JAK2は赤血球成熟にとって重要であり、JAK3シグナルは免疫監視及びリンパ球機能において重要な役割を示す。ウパダシチニブは選択的かつ可逆的にJAKを阻害し、STATリン酸化の阻害を介して炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑制する。
ウパダシチニブは、細胞アッセイ系においてJAK1及びJAK2を阻害し、EC50はそれぞれ9nmol/L及び628nmol/Lであった。また、キナーゼアッセイにおいて、JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2酵素活性を阻害し、IC50はそれぞれ0.043µmol/L、0.12µmol/L、2.3µmol/L及び4.69µmol/Lであった
ウパダシチニブはアジュバント誘導ラット関節炎モデルにおいて、後足浮腫及び骨侵食を用量依存的に抑制した
このウパダシチニブ〈リンヴォック錠〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- JAK1は炎症性サイトカインシグナル伝達
- JAK2は赤血球成熟に関するシグナル伝達
- JAK3は免疫監視、リンパ球機能に関するシグナル伝達
JAK阻害薬⑥:デルゴシチニブ〈コレクチム軟膏〉
デルゴシチニブは,ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1,JAK2,JAK3及びTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することにより,種々のサイトカインシグナル伝達を阻害する。
本作用機序に基づき,サイトカインにより誘発される免疫細胞及び炎症細胞の活性化を抑制して皮膚の炎症を抑制する。また,サイトカインにより誘発される掻破行動(そう痒)を抑制する
JAKファミリーのキナーゼ活性を,アデノシン三リン酸と競合して阻害した。
ヒト細胞において,サイトカインにより誘発されるSTATリン酸化を阻害した。
サイトカインにより誘発されるヒトT細胞及びB細胞の増殖を抑制した。また,サイトカインにより誘発されるヒトマスト細胞及び単球の炎症性サイトカインの産生を抑制した。
アトピー性皮膚炎モデルラットにおいて,皮膚の炎症を抑制した。
マウスにおいて,IL-31により誘発される掻破行動を抑制した。
このデルゴシチニブ〈コレクチム軟膏〉の作用機序からわかるポイントがコチラ!
- JAKファミリーの阻害によりヒトT細胞及びB細胞の増殖、サイトカインにより誘発されるヒトマスト細胞及び単球の炎症性サイトカインの産生を抑制した。
- JAKファミリーの阻害によりIL-31活性も抑制する
JAKファミリーの作用点まとめ
では、上記添付文書からの作用機序の要点と、他で調べた内容からJAKファミリーそれぞれのポイントをまとめてみます!
JAK1
JAK2
JAK3
Tyk2
STAT
今回はこんな感じー。
今注目の作用機序「JAK阻害薬」についてのまとめでした!
また新しい医薬品や、適応症等増えたら追記していきます。
ではではーしぐでしたっ
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