
こんにちは。薬剤師のしぐです。
「ニキビくらい、そのうち治る」「もっと顔を洗えばよいのでは」。身近な症状だからこそ、こんなふうに受け止められてしまうことがあります。
でも、ニキビは毛穴を中心に炎症が起こる皮膚の病気です。痕が残ることもあれば、学校や仕事、人と会うことへの気持ちに影響することもあります。
世界の尋常性痤瘡の年齢標準化罹患率と有病率は、1990年から2023年にかけて6割以上上昇。2050年には有病者数が約7,700万例に達するという将来推計も示されました。
このニュースで考えたいのは、人数の増加だけではありません。ニキビを治療できる病気として捉え、相談しやすく、治療を続けやすい環境をどうつくるかです。
まず押さえたいポイント
- 「6割超増」は世界の年齢標準化罹患率・有病率の変化で、日本の患者数の変化を示したものではありません。
- 2050年の約7,700万例は、統計モデルによる予測です。
- 白ニキビ・黒ニキビの段階から治療対象になり、炎症が落ち着いた後も再発予防が大切です。
- 治療開始時の乾燥や刺激への支援、本人の悩みを軽く扱わない声かけに、薬局が関われます。
尋常性痤瘡とは?白ニキビも治療の対象

尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)は、一般に「ニキビ」と呼ばれる病気です。顔だけでなく、胸や背中にも生じます。
皮脂の分泌が増え、毛穴の出口が詰まると、毛穴の中に皮脂がたまります。この初期の状態が「面皰(めんぽう)」です。白ニキビや黒ニキビがこれに当たります。
毛穴の中でアクネ菌が増殖しやすい環境になり、炎症が起こると、赤いニキビや膿を持つニキビにつながります。アクネ菌はもともと皮膚にいる常在菌なので、「菌がいるから不潔」という理解は適切ではありません。
| 状態 | 主な見た目・特徴 | 考えたいこと |
|---|---|---|
| 面皰 | 白ニキビ・黒ニキビ | 炎症が目立たなくても治療対象 |
| 炎症性皮疹 | 赤いぶつぶつ、膿を持つぶつぶつ | 炎症を抑え、痕を残さないために対応 |
| 深い炎症 | 痛みや硬いしこりを伴うことがある | 早めに皮膚科へ相談 |
| 治療後の変化 | 赤み、色素沈着、凹みなど | 活動性のニキビと痕を区別して評価 |
赤いニキビだけを見ていると、その前段階の毛穴の詰まりを見逃してしまいます。新しいニキビを増やさない視点が、治療の土台になります。
世界のニキビはどう変化した?
2026年10月14日に公表された研究では、世界疾病負荷研究(GBD)2023のデータを用い、1990~2023年の疾病負荷と2050年までの見通しが分析されました。
主な結果は、次のとおりです。
| 指標 | 1990年 | 2023年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 年齢標準化罹患率(人口10万人当たり) | 214.4例 | 358.7例 | 67.3%上昇 |
| 年齢標準化有病率(人口10万人当たり) | 425.9例 | 696.7例 | 63.6%上昇 |
| 年齢標準化DALY率(人口10万人当たり) | 9.2年 | 15.0年 | 63.5%上昇 |
罹患率は、新たに病気になる人の発生を表す指標です。有病率は、その時点・期間に病気を抱えている人の割合を表します。
「年齢標準化」は、人口の年齢構成の違いを調整する方法です。人口が増えたことだけでは説明できない変化を見るために使われます。ただし、この分析だけで増加の原因まで確定できるわけではありません。
DALY(障害調整生存年)は、病気によって失われる健康な生活の時間を、集団全体で評価する指標です。ニキビのDALY率が15.0年だからといって、一人の寿命が15年短くなる、という意味ではありません。
2050年に7,700万例という予測をどう読む?
2023年の世界の推定有病者数は約5,440万例。2050年には約7,700万例と推計され、約2,260万例増える見通しです。
| 指標 | 2023年の推計 | 2050年の予測 |
|---|---|---|
| 新規罹患者数 | 約2,780万例 | 約3,750万例 |
| 有病者数 | 約5,440万例 | 約7,700万例 |
| DALY | 約117万年 | 約165万年 |
将来予測には、過去の傾向に加え、人口規模や年齢構成の変化が組み込まれています。将来の受診行動や診断のされ方が変われば、実際の状況も変わります。
また、未受診・未診断の人を十分に捉えられない可能性もあります。モデルの予測区間には、元になるGBD推計そのものの不確実性が含まれていない点も限界です。
この数字を「必ずここまで増える」と受け取る必要はありません。身近な皮膚疾患への相談・診療体制を考える材料として捉えることが大切です。
思春期のニキビを「よくあること」で片づけない
2023年の年齢別解析では、罹患率は10~14歳、有病率は15~19歳で最も高くなりました。疾病負荷の大きい年齢層では、女性の値が男性より高い結果でした。
ただし、性別やニキビの数だけで、目の前の人のつらさは判断できません。数が少なくても、顔にある一つが気になって、人前に出たくなくなることがあります。
「気にしすぎ」「みんなできるものだから」という言葉は、相談の入口を閉じてしまうことがあります。
学校や家庭で伝えたいのは、「ニキビは治療できる病気で、困ったら相談してよい」ということ。からかったり、清潔さの問題に結びつけたりせず、本人の困りごとを聞く姿勢が大切です。
ニキビ治療は「炎症を抑える」と「再発を防ぐ」の両方

ニキビ治療では、赤みや膿を伴う炎症を抑える段階と、よい状態を保つ維持療法を考えます。
赤いニキビが減っても、毛穴が詰まりやすい状態が残っていれば再発することがあります。「目立たなくなったから、すべて終了」とは限りません。
| 主な薬 | 主な役割 | 薬局で確認したいこと |
|---|---|---|
| アダパレン | 毛穴の詰まりを改善し、面皰をできにくくする | 乾燥・赤み・刺激、妊娠に関する確認 |
| 過酸化ベンゾイル(BPO) | 抗菌作用と毛穴の詰まりの改善 | 刺激・かぶれ、製剤ごとの使い方 |
| アダパレン/BPO配合剤 | 2成分の作用を組み合わせる | 皮膚刺激と継続のしやすさ |
| 外用抗菌薬・抗菌薬配合剤 | 主に炎症性皮疹に使用 | 使用部位と期間、改善後の方針 |
| 内服抗菌薬 | 炎症性皮疹の状態に応じて使用 | 飲み方、併用薬、継続期間の評価 |
薬の選択は、重症度や部位、年齢、妊娠の可能性などで変わります。処方された薬が、いま出ている炎症に向けたものか、再発予防も担うものかを理解すると、使い続ける理由が見えやすくなります。
抗菌薬を使い続けることと、維持療法は違う
抗菌薬を長期間漫然と使うと、薬の効きにくい菌が増えることが問題になります。内服抗菌薬は一般に1~3カ月程度を目安に、反応を確認しながら使用期間を判断します。
炎症が落ち着いた後は、医師が抗菌薬の終了を検討し、アダパレンやBPOなどによる維持療法へつなぎます。終了時期は本人が一律に決めるものではありません。
「治療を続ける」とは、同じ抗菌薬をずっと使うことではなく、症状の段階に合わせて治療内容を見直していくことです。
内服薬を飲み忘れたときの考え方は、コチラでも整理しています。実際の対応は、処方された薬ごとに確認しましょう。

乾燥・ヒリヒリで治療を諦めないために
アダパレンでは、使い始めの時期に乾燥、赤み、皮むけ、ヒリヒリ感などが出ることがあります。初期の刺激を知らずに使うと、「肌が悪くなった」と感じて中断につながりがちです。
一方で、どんな症状でも我慢して使い続ければよいわけではありません。
| 状況 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 軽い乾燥・つっぱり感 | 保湿や塗り方を確認し、続く場合は医師・薬剤師へ相談 |
| ヒリヒリして続けにくい | 使用量・頻度・範囲や併用製品を確認し、処方医と調整 |
| 強い赤み、腫れ、水ぶくれ、広がるかぶれ | 使用を中止し、速やかに医療機関へ相談 |
塗る範囲や量は、処方時の指示に沿って確認します。多く塗れば早く治るわけではなく、自己判断で広い範囲に増やすことは避けます。
アダパレンは、妊婦または妊娠している可能性のある人には使えません。妊娠を希望している場合も事前に相談が必要です。配合剤にも含まれることがあるため、商品名だけでなく成分まで確認します。
保湿は「ニキビだから不要」ではない
治療による乾燥があるときは、肌に合う保湿を組み合わせます。製品を選ぶ際は、ノンコメドジェニックテスト済みなどの表示も参考になります。ただし、すべての人にニキビができないことを保証する表示ではありません。
スクラブやピーリング製品を次々と追加すると、刺激が重なることがあります。いま使っている洗顔料、化粧品、市販薬も一緒に確認しましょう。日焼けへの配慮も必要です。
薬剤師向けの関連情報として、コチラもまとめています。これは保湿剤の剤形・量の確認に関する記事で、ニキビに特定の保湿薬を一律に勧めるものではありません。

洗いすぎない、つぶさない、食事を極端に制限しない
ニキビは、洗顔不足だけで起こる病気ではありません。洗顔は通常1日2回を目安に、泡立てた洗顔料でやさしく洗い、十分にすすぎます。強くこすったり、何度も洗ったりすると刺激になります。
つぶす、爪で触る、繰り返しこする習慣も見直したいところです。炎症や痕の悪化につながることがあります。
食事も、特定の食品を全員に禁止する必要はありません。自分で悪化に気づく食品があれば調整しつつ、特に成長期は極端な制限を避けます。生活習慣を整えることと、必要な薬物治療を受けることは両立できます。
化粧品や医薬部外品によるケアと、医薬品による治療の役割も異なります。セルフケアだけで改善しない場合は、皮膚科への相談を検討しましょう。
しぐ的・薬局で大切にしたい「続けられない理由」の確認

ニキビ治療で確認したいのは、「毎日使っていますか?」だけではありません。
「乾燥して使いにくくありませんか」「どこまで塗るか迷いませんか」「よくなったときに、やめてよいか分からなくなりませんか」。具体的に聞くと、中断の理由が見えてきます。
| 確認すること | 声かけの例 |
|---|---|
| 効果への期待 | 「数日で判断せず、次の診察までの変化を一緒に見ていきましょう」 |
| 刺激症状 | 「赤みやヒリヒリで使いにくいところはありませんか?」 |
| 塗り方 | 「量や塗る範囲で迷うところはありませんか?」 |
| 維持療法 | 「赤みが落ち着いた後の薬の使い方も確認しておきましょう」 |
| 生活との両立 | 「学校や仕事の生活の中で、使いにくい時間帯はありますか?」 |
| 心の負担 | 「肌のことで、生活の中で困っていることはありませんか?」 |
これは研究の結果そのものではなく、薬局での支援につなげる実務上の提案です。
ニキビの相談は、周囲に聞かれたくないこともあります。声の大きさや相談場所にも配慮し、本人が話しやすい環境をつくることも薬局の役割です。
早めに皮膚科へ相談したいとき
痛いしこりがある、痕が残り始めている、胸や背中に広がっている、セルフケアを続けても改善しないときは、早めの相談を勧めます。
ニキビの数が少なくても、人に会うのがつらい、学校や仕事に行きにくいと感じているなら、その時点で相談してかまいません。「もっとひどくなるまで待つ」必要はありません。
まとめ
ニキビの世界的な疾病負荷は増加しており、将来も拡大する可能性があります。ただ、目の前の患者さんへの支援は、大きな数字の話だけでは進みません。
毛穴の詰まりから治療すること、炎症が落ち着いた後も必要な維持療法につなぐこと、刺激で困ったときに相談できること。その一つひとつが、治療を続けやすくします。
「よくあるニキビだから」で終わらせず、「いま何に困っているか」を確認する。薬局でも学校でも、大切にしたい視点です。
FAQ
Q. 「ニキビが6割増えた」とは、日本の患者数のことですか?
いいえ。今回の数字は、世界の年齢標準化罹患率・有病率の1990~2023年の変化です。日本の患者数が同じ割合で増えたことを示すものではありません。
Q. 2050年には必ず7,700万例になるのですか?
統計モデルによる予測です。人口の変化や過去の傾向を用いていますが、将来の診療・受診行動などにより実際の人数は変わり得ます。
Q. 白ニキビだけでも皮膚科で相談できますか?
はい。白ニキビや黒ニキビも、面皰という治療対象です。赤く腫れるまで待つ必要はありません。
Q. 赤いニキビが減ったら、薬をやめてもよいですか?
薬によって役割が異なります。抗菌薬の終了を検討する一方で、毛穴の詰まりへの維持療法が必要な場合があります。医師の指示を確認しましょう。
Q. 塗り薬でヒリヒリするのは、効いている証拠ですか?
刺激症状を効果の目安にはできません。続けにくい刺激は相談し、強い赤みや腫れ、水ぶくれ、広がるかぶれがあれば使用を中止して速やかに受診してください。
Q. ニキビは洗顔を増やせば治りますか?
洗顔だけで解決するとは限りません。過度な洗顔や摩擦を避け、通常1日2回を目安にやさしく洗い、必要な治療と保湿を組み合わせます。
Q. 妊娠を考えている場合、ニキビの塗り薬は使えますか?
成分ごとの確認が必要です。アダパレンやそれを含む配合剤は、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には使えません。妊娠を希望している場合も処方医・薬剤師へ相談してください。


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