
こんにちは、薬剤師のしぐです。
薬局で働いていると、医薬品卸の存在は本当に身近ですよね。毎日の納品はもちろん、欠品した薬の相談、入荷予定の確認、ときには急ぎの配送まで。患者さんに薬を渡す、その一歩手前を支えてくれているのが卸です。
その一方で、「医薬品卸の利益率は約1%」という話を聞くと、少し驚きませんか? あれだけ多くの薬を扱い、全国に配送網を張り巡らせていても、本業で残る利益は売上のごく一部なんですね。
まず結論です。ここでいう約1%は、主に営業利益率のことです。確認できた日本医薬品卸売業連合会の『医薬品卸売業の経営概況(令和7年版)』では、2025年欄の営業利益率は1.11%でした。 すべての卸、すべての取引が同じ利益率という意味ではありません。
薬の安定供給を考えるときは、メーカーの生産量に加えて、薬を保管し、品質を守り、医療機関や薬局まで届ける仕組みにも目を向けたいところです。今回は卸の利益構造と流通の課題、主要4グループの取り組み、そして薬局でできることを整理します。
※情報確認日:2026年10月13日。各社の取り組みは公式公表情報に基づく代表例で、提供地域や利用条件は異なります。
医薬品卸の「利益率約1%」は何を意味する?
売上総利益率と営業利益率は違う
「利益率1%」と聞くと、薬を仕入れて販売した差額が1%しかないようにも感じますが、そこは分けて考える必要があります。
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いたもの。営業利益は、そこから人件費や物流に関わる費用などの販売費・一般管理費を差し引いた、本業の利益です。
卸連の令和7年版に掲載された2025年欄の数値を並べると、構造が見えてきます。
| 指標 | 2025年欄 | 意味 |
|---|---|---|
| 売上総利益率 | 6.15% | 売上高から売上原価を差し引いた利益の割合 |
| 販売費・一般管理費率 | 5.04% | 人件費など、本業を運営するための費用の割合 |
| 営業利益率 | 1.11% | 売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた利益の割合 |
| 経常利益率 | 1.40% | 営業外損益も加味した利益の割合 |
つまり、売上総利益6.15%のうち、5.04%分が事業を動かす費用に充てられ、営業利益として残るのは1.11%という関係です。
この「1.11%」を、薬局の薬価差やメーカーの利益率とそのまま比較することはできません。見ている利益の種類や事業の範囲が違うからです。卸のグループ連結決算には、医薬品卸以外の事業が含まれる場合もあるため、数値を見るときは集計対象も確認したいですね。
1%前後では、コスト上昇の影響を受けやすい
仮に売上100億円で営業利益率1%なら、営業利益は1億円です。ここで、売上や売上総利益が変わらず、運営費用だけが5,000万円増えると、営業利益は5,000万円になります。
これは説明用の単純な例ですが、売上の0.5%に相当するコスト増でも、利益には大きく響くことがわかります。
卸連の同資料では、営業利益率は2023年欄0.84%、2024年欄1.00%、2025年欄1.11%と改善しています。ただ、改善していることと、十分な余裕があることは別の話です。日々の配送を続けながら、設備更新や災害への備えにも投資する必要があります。
約1%という数字は、卸の経営の話であると同時に、「これからも薬を届け続けられるか」という医療の話でもあると感じます。
医薬品卸が担うのは、配送だけではない
卸の仕事は、薬を箱に詰めて運ぶだけではありません。
メーカーから仕入れた医薬品を適切に保管し、注文に合わせて正確に出荷する。必要な温度を維持し、ロットや使用期限を管理する。回収があれば対象製品の流通を追い、供給不足が起きれば医療機関や薬局からの問い合わせに対応する。これらも流通を支える仕事です。
| 卸の機能 | 医療現場にとっての意味 |
|---|---|
| 多品目の調達・保管 | 各施設が必要とする薬を、複数メーカーからまとめて確保する |
| 品質・温度管理 | 製品ごとの保管・輸送条件に沿って品質を守る |
| 正確な出荷・配送 | 品目や数量の間違いを防ぎ、必要な場所へ届ける |
| ロット・期限・流通履歴の管理 | 回収対応や追跡確認につなげる |
| 供給情報の共有 | 入荷見通しを踏まえ、薬局が次の対応を考えられるようにする |
| 災害時の供給継続 | 拠点やシステムのバックアップで、供給の途絶に備える |
薬局では「いつ入るか」が大きな関心になります。でも、その納品の裏側には、目に見えにくい管理や準備が積み重なっています。
とくに、温度管理が必要なバイオ医薬品や高額なスペシャリティ医薬品では、保管・輸送中の状態を確認できる仕組みも重要です。薬の価値を患者さんまでつなぐには、流通の品質も欠かせないんですね。

配送コストと在庫管理が難しくなる理由
少量の納品でも、配送には一定の手間がかかる
配送の負担は、売上金額だけで決まるわけではありません。少量の注文でも、商品を取り出し、確認し、荷物を準備して、車で運び、納品する工程が必要です。
同じ薬局へ何度も追加配送が発生すれば、その都度作業や移動が増えます。訪問先同士が離れている地域では、走行距離も長くなります。同じ購入額でも、配送頻度や地域によって支えるためのコストは変わるわけです。
「一箱だけだから、ついでにお願いします」。現場では口にしやすい言葉ですが、その一箱にも確かに仕事が発生しています。ここは薬局側も意識しておきたいところです。
供給不足は、問い合わせと調整の負担も増やす
薬が不足すると、通常の発注に加えて、入荷予定の照会、必要数量の確認、別規格や別銘柄の検討などが発生します。薬局も卸も、同じ一品目に何度も時間を使う状況になりやすいですよね。
ただし、物流を効率化すれば、メーカーの生産不足まで解決するわけではありません。 薬が作られ、卸へ入ってくる量自体が足りなければ、配送体制だけでは補えません。
だからこそ、「物そのものが足りない問題」と「限られた薬を必要な場所へ届ける問題」を分けて考えることが大切です。卸への連絡では、欲しい数量だけでなく、患者さんの手持ちや必要な期日を伝えると、状況を共有しやすくなります。
在庫は、多く持てば安心というわけでもない
在庫を増やせば、ある程度は急な需要に対応しやすくなります。一方で、購入資金や保管場所が必要になり、使用期限切れや不動在庫のリスクも増えます。
反対に、在庫を削りすぎると、欠品や急配が増えてしまう。求められるのは、できるだけ少ない在庫ではなく、患者さんへの供給に必要な量を、使い切れる見通しとともに持つことです。
需要予測はそのための道具ですが、処方の急変や供給停止をすべて予測できるわけではありません。過去の使用量に、連休、受診予定、処方変更などの情報を組み合わせるところに、現場の判断が必要になります。

主要4グループは、物流・配送・在庫管理にどう取り組んでいる?
各社の公式公表情報から、代表的な取り組みを整理しました。順位付けではなく、異なる仕組みや工夫に注目した比較です。
| グループ | 物流・配送の取り組み例 | 在庫管理・現場支援の取り組み例 |
|---|---|---|
| メディパル | ALC・FLCによる物流網、ALCからの直接配送、定時配送 | 出荷実績に基づく需要予測、スキャン検品、棚配置に合わせた箱詰め |
| アルフレッサ | 高機能物流センター、AIを活用した配送業務量予測・配車計画 | 温度管理、誤出庫防止、在庫・受発注支援、特殊医薬品の供給管理 |
| スズケン | エス・ディ・ロジとの連携、メーカー物流の共同化、災害への備え | 納品予定の見える化、発注支援、キュービックスシステムによる管理状態の確認 |
| 東邦 | TBCでの出荷自動化、免震・自家発電を備えた物流拠点 | 製造番号・有効期限の一元管理、ENIFなどの顧客支援システム |
※特殊医薬品向けサービスと通常の卸配送は、対象製品や利用条件が異なります。各機能が全取引先へ一律に提供されるわけではありません。
メディパル:配送から、薬局の検品・棚入れまで考える
メディパルは、都市型の物流センターALCと、連携する営業兼物流拠点FLCを整備しています。ALCから支店を経由せずに配送する仕組みや、決まった時間帯に届ける定時配送が特徴です。
在庫管理には出荷実績に基づく需要予測を活用。出庫時のバーコード確認などに加え、納品時のスキャン検品や、薬局の棚配置に合わせた箱詰めも公表しています。
薬局から見ると、納品後の作業まで考えられている点が興味深いですね。入荷品の確認と棚入れにかかる時間が短くなれば、その分を調剤や患者さんへの対応に回しやすくなります。
アルフレッサ:配送量を予測し、車両の使い方を整える
アルフレッサは、物流センターでの温度管理や誤出庫防止に取り組むとともに、ヤマト運輸との協業による配送業務量予測・配車計画システムを公表しています。
販売・物流などのデータをAIで分析し、配送業務量の予測と適正な配車につなげる仕組みです。2025年の公式紹介でも、この取り組みが挙げられています。
また、在庫や受発注を支援するシステム、特殊医薬品の供給・在庫管理を支える仕組みも展開しています。配送車を増やすだけでなく、必要な仕事量を見通し、物流と現場の管理を整える方向ですね。
スズケン:入荷予定と管理状態を見えるようにする
スズケンは、物流を担うエス・ディ・ロジとの連携に加え、納品予定を知らせるサービスや発注支援を展開しています。メーカー物流では、共同化による配送効率化と流通在庫の適正化も掲げています。
スペシャリティ医薬品向けのキュービックスシステムでは、専用保管庫などを用い、輸送や院内保管中の管理状態を遠隔で確認する仕組みを構築しています。
薬局にとっては、「在庫があるか」に加えて「いつ届くか」がわかることも大切です。見通しが共有できれば、患者さんへの連絡や処方元への相談を、もう少し早く進められる可能性があります。
東邦:自動化とバックアップで、供給を支える
東邦は、TBCと呼ぶ物流センターで、ロボットによるピッキングや入荷から出荷までの自動化を進めています。TBCダイナベースは免震構造と自家発電設備を備え、災害時の供給にも備えています。
製品ごとの有効期限や製造番号を一元管理するシステム、拠点が被災した場合のシステムバックアップも公表しています。顧客支援では、ENIFなどの発注・情報提供の仕組みを展開しています。
普段の効率だけでなく、トラブルが起きても供給を続けられるようにする。その準備にも、設備と人への投資が必要なんですね。
2026年の流通改善では、コストと取引条件も考える
2026年3月4日に改訂された流通改善ガイドラインでは、物価水準や地域差、人件費・流通コストを踏まえた価格設定と、双方が根拠や妥当性を説明する交渉が示されています。
頻回配送や急配についても、卸がコストの根拠を説明し、費用負担を求める場合などには当事者間で契約を締結する考え方です。全国一律に急配が有料化された、という意味ではありません。
また、適正在庫の維持、過剰な発注や不必要な急配を控えること、供給不足時の店舗間・地域連携による調整も示されています。
薬局にとって購入価格は大切です。同時に、その価格で、どの配送条件と供給体制を維持できるのかも、具体的に話し合いたいところです。
たとえば、定時配送の時間、発注の締切、急配を相談する窓口、休日の対応、返品条件。取引の前提が共有されていれば、薬局も計画を立てやすくなります。

薬局でできること|急配を減らし、必要な配送を守る
ここからは、流通の課題を踏まえた薬局実務への提案です。すべての急配をなくすことが目標ではありません。患者さんの治療に必要な配送を確保するために、予防できる負担を減らすという考え方です。
発注の時間と担当を決めて、追加注文を整理する
業務の合間に、気づいた人がその都度発注する。忙しい薬局では自然な流れですが、一日の注文が細かく分かれたり、同じ品目を重複発注したりする原因にもなります。
通常発注を確認する時間と担当を決め、締切前にまとめて見直す。それだけでも、追加注文の一部は減らせるかもしれません。ただし、必要な薬まで翌日に回さないよう、緊急分は別に判断する運用が大切です。
発注点は「残りの箱数」だけで決めない
毎日使う薬も、月に数回しか使わない薬も、一律に「残り一箱で発注」では、在庫が不足する薬と余る薬が出てきます。
次の納品までに何日あるか、その間にどれくらい使うか、処方が増減しているか。この組み合わせで発注点を見直したいですね。
発注点は、次の入荷までの見込み使用量に、必要な安全在庫を加えて考えるのが基本です。供給不安がある品目では、通常品と分けて入荷見通しを確認します。安全在庫は、一律に増やすのではなく、必要性と使い切れる見通しで判断します。
急配を相談するときは、患者さんの状況まで伝える
「今日ほしいです」だけでは、切迫した理由が伝わりにくいことがあります。少なくとも、必要な期日、最低限必要な数量、患者さんの手持ち、分割納品が可能かを整理すると、相談が具体的になります。
患者さんの個人情報は必要最小限にしつつ、たとえば「明日の服用分までしかない」「治療開始日が決まっている」と伝える。それだけでも、単なる在庫補充なのか、治療継続に関わる相談なのかが共有しやすくなります。
不動在庫は「返品できる前提」で増やさない
2026年改訂のガイドラインでは、厳格な温度管理が必要な薬、期限切れ・開封品、在庫調整を目的とする返品などは、双方が慎む対象として整理されています。
高額薬や冷所品は、処方予定や治療継続の見通し、返品条件を注文前に確認したいところです。在庫一覧を定期的に見直し、採用品目の変更や処方減少に早く気づくことも、不動在庫の予防につながります。
卸との打ち合わせに、配送と在庫の話を加える
価格の相談と一緒に、次の項目も確認してみると、日常業務の改善につながりそうです。
| 確認したい項目 | 薬局で考えること |
|---|---|
| 定時配送・発注締切 | 通常発注を、どのタイミングでまとめるか |
| 急配・休日対応 | 緊急時の窓口と対応範囲を共有できているか |
| 在庫・納品予定の確認方法 | 電話以外でも状況を確認できるか |
| 返品・冷所品の条件 | 注文前に条件を確認できているか |
| 欠品・災害時の連絡 | 通常の連絡がつかない場合の手段はあるか |
| 支援システムの利用条件 | 費用と、現場で減らせる作業が見合うか |
供給不足への対応は、一店舗だけで抱え込まず、地域全体で考える視点も必要です。コチラも、あわせて整理しています。

よくある質問
医薬品卸の利益率は、本当に1%しかないのですか?
営業利益率として約1%という水準が示されています。卸連の令和7年版では2025年欄が1.11%でした。ただし、企業・期間・集計対象によって異なり、各社の連結利益率や個々の薬の利益率を表す数字ではありません。
卸の粗利益も1%ということですか?
いいえ。同資料の2025年欄では売上総利益率は6.15%で、販売費・一般管理費率5.04%を差し引いた営業利益率が1.11%です。粗利益と営業利益は区別して読みます。
配送を減らせば、薬不足は解決しますか?
配送の効率化は流通の維持に役立ちますが、メーカーの生産量不足まで解決するものではありません。生産・供給量の問題と、必要な場所へ届ける問題の両方への対応が必要です。
急配をお願いするのは、避けたほうがよいですか?
患者さんの治療に必要な急配は、具体的な事情を伝えて相談します。見直したいのは、発注漏れや漫然とした少量注文などで繰り返す、予防できる急配です。
2026年から急配は一律に有料になったのですか?
一律の有料化を示すものではありません。改訂ガイドラインでは、コストの説明と、費用負担を求める場合などの契約締結が示されています。実際の条件は取引先との契約・協議で確認します。
大手4社のどこを選べば、供給が最も安定しますか?
公表情報だけで一律の順位は付けられません。地域の物流拠点、配送時間、取扱品目、欠品時の連絡体制、緊急対応、システムの利用条件を、自薬局の需要に合わせて比較することが大切です。
まとめ|薬が届く仕組みも、医療の一部
医薬品卸の営業利益率は約1%。その背景には、全国の物流網、多品目の在庫、品質管理、医療機関や薬局への配送を維持するための費用があります。
各社は、物流センターの自動化、需要予測、配車計画、温度管理、情報の見える化などを進めています。薬局側も、通常発注を整理し、適正在庫を考え、必要な急配の理由を具体的に伝えることで、その仕組みを支えることができます。
薬局も、もちろん余裕のある経営環境ではありません。だからこそ、卸か薬局のどちらかに負担を押し付けるのではなく、患者さんへの供給を守れる条件を一緒に考えたいですね。
薬を安く仕入れる視点と、必要な薬がこれからも届く視点。その両方を持つことが、安定供給につながる。毎日の納品を見ながら、改めて意識しておきたいテーマです。


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