こんにちは、薬剤師のしぐです。
脂質異常症の処方箋で、新しい飲み薬「ネクセトール」を見かける機会が増えてきました。2026年12月1日からは、新薬に対する1回14日分の投薬日数制限が解除となる予定です。通院や薬の受け取りの負担が減ることは、患者さんにとってうれしい変化ですよね。
ただ、薬剤師として気になるのは、その先です。「スタチンで筋肉痛が出た人にも使う薬なのに、横紋筋融解症には注意が必要なの?」。ここ、少し引っかかりませんか。
今回は、ネクセトールの立ち位置と類似薬との違い、そして横紋筋融解症の発現頻度をどう読むかを、長期処方に向けた薬局での確認ポイントまでつなげて整理します。
情報確認日:2026年10月28日。制限解除日は現行電子添文の「2026年11月末日まで1回14日分」という記載に基づきます。公開・処方時には最新情報をご確認ください。

まず押さえたい、ネクセトールの3つのポイント
- 一般名はベムペド酸。スタチンより上流のATPクエン酸リアーゼ(ACL)を阻害する飲み薬です。
- スタチンで効果不十分、または副作用の既往・禁忌などでスタチン治療が適さない患者さんが対象です。
- 肝臓で活性化される特徴がありますが、スタチン併用時の筋障害と、尿酸値上昇・痛風の確認は欠かせません。
「新しいコレステロールの薬」と覚えるだけでは、処方意図が見えにくい薬です。何を補うために追加されたのか、何が理由で置き換えられたのか。そこを確認すると、服薬指導の内容も変わってきます。
ネクセトールの基本情報と処方日数制限
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名/一般名 | ネクセトール錠180mg/ベムペド酸 |
| 分類 | ATPクエン酸リアーゼ阻害剤 |
| 効能・効果 | 高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症 |
| 用法・用量 | 通常、成人に180mgを1日1回経口投与 |
| 承認/薬価収載/発売 | 2025年9月19日/2025年11月12日/2025年11月21日 |
| 収載時薬価 | 180mg 1錠371.50円。現在の請求薬価は最新の薬価基準で確認 |
| 投薬日数制限 | 2026年11月30日までは1回14日分が限度。現行記載上、同年12月1日から解除予定 |
製品概要はメーカー公表情報、日数制限は電子添文に基づきます。
ここで気をつけたいのは、日数制限解除と、全員を長期処方にする判断は別ということです。導入直後、併用薬変更直後、筋症状がある場合などは、医師が状態に応じて処方日数や検査間隔を判断します。
薬局では、来局間隔が延びる患者さんほど「次の受診まで待たずに相談してよい症状」を具体的に共有しておきたいですね。
スタチンとはどこが違う?肝臓で活性化され、合成経路の上流に作用
ネクセトールは、体内で活性化されて働くプロドラッグです。活性化に関わるACSVL1という酵素は肝臓で高く発現し、骨格筋ではほとんど発現していません。このため、肝臓を中心に作用する点が特徴です。
活性化された薬はACLを阻害し、肝臓でのコレステロール合成を抑えます。その結果、肝細胞のLDL受容体が増え、血液中のLDLコレステロール(LDL-C)が取り込まれやすくなります。スタチンが阻害するHMG-CoA還元酵素よりも上流に作用します。

患者さんには、「コレステロールが作られるのを、これまでと違う場所で抑える薬です」と説明すると、入りやすいと思います。
ただし、筋肉で活性化されにくいという薬理学的特徴から、筋肉の副作用が起きないとまではいえません。特にスタチンを一緒に使う場合は、薬同士の影響も考える必要があります。
単剤で使う?スタチンへの追加?処方意図を先に確認
国内では、スタチンで効果不十分な患者さん、または副作用の既往などで使用が困難・禁忌となる患者さんに使います。スタチンによる治療が適さない場合を除き、スタチンと併用することが電子添文に定められています。
つまり、「筋肉にやさしそうだから、今飲んでいるスタチンを自分でやめてよい」という話にはなりません。
薬局で確認したいのは、追加なのか切り替えなのか、以前どのスタチンでどんな症状が出たのか、そのときCKなどの検査値はどうだったのか、という点です。「スタチンが合わなかった」という一言にも、筋肉痛、検査値異常、その他の事情など、いろいろな背景があります。
家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体では使用経験がなく、やむを得ない場合に限ってLDLアフェレーシス等の補助として適用を考慮する扱いです。家族性という病名だけで、すべて同じように考えないことも大切です。
横紋筋融解症の発現頻度は?「6.3%」の意味を取り違えない
横紋筋融解症そのものの発現率は、電子添文に数値が示されていない
まず結論です。確認した国内電子添文では、横紋筋融解症そのものの発現頻度は数値で示されていません。「重大な副作用」として横紋筋融解症の頻度区分を掲載する形でもなく、「重要な基本的注意」でスタチン併用時のリスクを注意喚起しています。したがって「0%」「○%未満」と推定したり、「頻度不明と記載されている」と言い換えたりするのは避けたいところです。
また、審査報告書には筋障害に関連する有害事象の集計がありますが、これは横紋筋融解症だけを数えたものではありません。
| 評価対象 | ベムペド酸群 | プラセボ群 | 数字の意味 |
|---|---|---|---|
| 国内プラセボ対照試験統合:筋障害関連有害事象 | 6.3%(6/96例) | 5.3%(5/95例) | 筋肉痛、筋痙縮、CK上昇等を含む集計 |
| 国内長期投与試験:筋障害関連有害事象 | 7.7%(10/130例) | 対照群なし | 横紋筋融解症単独の発現率ではない |
| 海外第Ⅲ相試験統合:筋障害関連有害事象 | 12.9%(312/2,424例) | 10.4%(125/1,197例) | 国内試験とは患者背景等が異なる |
| 同海外統合:筋肉痛 | 4.9%(118/2,424例) | 5.3%(63/1,197例) | 個別の筋症状の有害事象 |
| 同海外統合:CK増加 | 1.9%(47/2,424例) | 1.3%(16/1,197例) | 検査値上昇と横紋筋融解症の診断は同一ではない |
出典:PMDA審査報告書7.R.3.3(PDF47~48ページ/本文45~46ページ)。有害事象は、薬との因果関係を問わず生じた出来事です。
さらに紛らわしいのですが、国内第Ⅲ相試験の副作用全体も6.3%(3/48例)です。こちらは関節痛・筋痙縮・四肢不快感が各1例という集計。先ほどの「筋障害関連有害事象6/96例」とは、分母も評価項目も違います。数字だけを抜き出すと、別の意味になってしまうんですよね。
海外CLEAR Outcomesでは、報告例と診断基準を満たす例を区別
横紋筋融解症そのものについて、海外大規模試験の結果も見ておきます。EMAのCLEAR Outcomes評価資料では、治験担当医から横紋筋融解症として報告された有害事象は、ベムペド酸群7例(0.1%)、プラセボ群1例(0.1%未満)でした。安全性解析集団はそれぞれ7,001例、6,964例です。
一方、報告された8例のうち、資料に記載されたACC/AHA/NHLBIおよび欧州動脈硬化学会の臨床診断基準を満たしたのは、各群1例でした。この2例はいずれも治験担当医・スポンサーにより治験薬との関連なしと評価されています。報告8例には、運動、転倒、敗血症、長時間床上に倒れていたこと、併用薬など、別の原因となり得る要因がありました。
したがって「薬が原因の横紋筋融解症が0.1%で起こる」とは説明できません。同時に「起きない」と断定することもできません。国内電子添文の記載、海外で報告された有害事象、診断基準を満たした症例を分けて読むことが大切です。海外試験の割合は、国内実臨床での発現率や年間発現率を示すものでもありません。
スタチン併用時に注意する理由は、血中濃度の上昇
ネクセトールはスタチンの血中濃度を上げることがあり、併用時には横紋筋融解症等の発現に注意が必要です。外国人の相互作用試験では、スタチンのAUCはアトルバスタチン1.29~1.77倍、ロスバスタチン1.45~1.69倍、シンバスタチン酸1.91~1.96倍、プラバスタチン1.46~1.99倍でした。
これらは複数の用量・条件で行われた試験の範囲で、一部は国内承認用量と異なります。この倍率から、日本の通常用量での副作用発現率や減量幅を直接計算することはできません。
電子添文は、スタチン併用時に定期的なCK測定など、十分な観察を求めています。筋症状の出にくさへの期待と、併用時の安全確認。この両方をセットで理解したい薬です。
患者さんには、どんな症状を伝える?
「いつもと違う筋肉痛」「力が入りにくい」「赤褐色の尿・コーラ色の尿」などは、横紋筋融解症を疑う手がかりになります。全部そろうまで待つ必要はありません。症状があれば次回受診を待たず速やかに医師・薬剤師へ相談し、強い脱力や尿量減少などがあれば早急な受診が必要です。
薬局では、症状が始まった時期、部位、程度、併用薬の追加・増量、激しい運動などを確認し、必要な受診や処方医への連絡につなげます。「運動のせいですよね」と片づけず、変更前後の経過を聞くことが大切だと思います。
スタチン・ゼチーア・レパーサ・レクビオと比較
いずれもLDL-Cを下げる治療に関わりますが、作用する場所と使い方が違います。薬効の強弱だけで並べるより、「何を狙って使う薬か」で見るほうが、処方意図をつかみやすいです。

| 薬剤 | 作用の中心 | 投与方法 | 薬局で押さえたい違い |
|---|---|---|---|
| ネクセトール(ベムペド酸) | 肝臓で活性化後、ACLを阻害し合成を抑える | 180mgを1日1回内服 | スタチン治療が適さない場合を除き併用。尿酸・痛風、併用時の筋障害に注意 |
| スタチン | HMG-CoA還元酵素を阻害し合成を抑える | 経口。用量・服用時点は製剤による | ネクセトールより下流の酵素を阻害。各製剤の筋障害・肝障害・相互作用を確認 |
| ゼチーア(エゼチミブ) | 小腸でコレステロール吸収を阻害 | 通常10mgを1日1回食後内服 | 合成を抑える薬とは標的が違う。横紋筋融解症は重大な副作用として頻度不明の記載 |
| レパーサ(エボロクマブ) | 抗体でPCSK9を阻害しLDL受容体の分解を抑える | 通常、非HoFHでは140mgを2週ごと又は420mgを4週ごとに皮下注 | 心血管リスク等の適応条件、注射部位反応、保管・自己注射の確認が必要 |
| レクビオ(インクリシラン) | siRNAでPCSK9の産生を抑える | 300mgを初回、3か月後、以降6か月ごとに皮下注 | 抗体製剤とは仕組みが異なる。投与予定日を含め継続管理が必要 |
各薬の承認条件や注意事項は異なります。表は相互に自由に置き換えられることを意味しません。
ゼチーアとネクセトールは、どちらもスタチン以外の飲み薬ですが、「吸収を抑える」「合成を抑える」という違いがあります。エゼチミブには後発品があるため費用面も確認したいところ。実際の選択は、これまでの治療、必要なLDL-C低下、忍容性、費用、続けやすさを合わせて考えます。
なお、薬ごとの添付文書の頻度表記を、そのまま安全性ランキングにはできません。「頻度不明」は発現率が高い意味でも低い意味でもなく、数値を算定できないということです。試験の患者背景や観察期間も異なります。
PCSK9を標的とする治療については、コチラでも紹介しています。ネクセトールのACL阻害とは、作用点が異なります。

LDL-Cはどのくらい下がる?国内試験と心血管イベントのデータ
国内第Ⅲ相試験では、既存の脂質低下療法下でコントロール不十分または不耐の患者96例を対象に検討されました。12週時のLDL-C変化率はネクセトール群−25.25%、プラセボ群−3.46%、群間差は−21.78パーセントポイントでした。
ここは「飲めば誰でも25%下がる」と説明しないようにしたいですね。背景治療や患者さんの状態がある中での平均値です。実際には、追加前後のLDL-Cと、その患者さんの目標値を見て評価していきます。
海外のCLEAR Outcomes試験では、心血管疾患を有するか高リスクで、スタチン不耐の患者13,970例を追跡しました。追跡期間中央値40.6か月で、主要複合心血管イベントはベムペド酸群11.7%、プラセボ群13.3%、ハザード比0.87(95%信頼区間0.79~0.96)でした。絶対差は1.6パーセントポイントです。
LDL-C低下に加え、こうしたアウトカムのデータがある点は注目したいところです。一方、この結果をすべての患者さんにそのまま当てはめたり、死亡率が下がると説明したりはできません。国内承認効能は高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症であり、海外試験の評価項目と分けて理解します。
筋肉だけでなく、尿酸値と痛風もチェック
ネクセトールのフォローでは、尿酸値も見落とせません。電子添文の副作用欄では高尿酸血症が5%以上、痛風が1~5%未満に分類されています。国内長期投与試験では副作用として高尿酸血症6.2%(8/130例)、血中尿酸増加2.3%(3/130例)が報告されています。
審査資料では尿酸輸送に関わるOAT2阻害が尿酸値上昇の機序として説明されています。痛風の既往や高尿酸血症がある患者さんは、悪化に注意が必要です。
服薬指導では「以前、足の親指の付け根が急に赤く腫れて痛んだことはありますか」「尿酸の薬を飲んでいますか」と、具体的に聞くほうが思い出してもらえることがあります。尿酸値は症状がなくても上がるため、痛みがないことだけで判断せず、採血結果や次回検査予定を確認します。
海外CLEAR Outcomes試験の痛風は3.1%対2.1%でしたが、これは有害事象のデータです。国内電子添文の副作用頻度と同じ集計ではありません。

長期処方に向けて、薬局で確認したいこと
| 確認の場面 | 聞きたいこと・見たいこと |
|---|---|
| 処方開始・変更時 | 追加か切り替えか、スタチン不耐の具体的な経過、他院を含む併用薬 |
| 安全性 | 筋肉痛・脱力・尿の変化、痛風歴、尿酸値、スタチン併用時のCK、肝機能などの検査状況 |
| 効果 | 開始前後のLDL-C、患者ごとの目標、飲み忘れや自己中断 |
| 長期処方への移行 | 次回受診・検査予定、症状が出た際の連絡先、残薬と服薬の続けやすさ |
これは薬局での実務上の整理です。検査間隔を一律に決めるものではなく、患者さんの状態や処方医の方針に合わせて確認します。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌です。妊娠する可能性がある場合は、投与中と最終投与後1週間の避妊について説明が必要です。授乳はしないことが望ましいとされています。
患者さんへの説明は、たとえばこんな形です。
「コレステロールが作られるのを抑える、新しいタイプのお薬です。いつもと違う筋肉痛や力の入りにくさ、尿の色の変化があれば、次の受診まで待たずに相談してください。尿酸値が上がることもあるので、以前痛風になったことがあれば教えてくださいね。」
副作用をたくさん読み上げるだけでは、患者さんは何を覚えればよいか迷ってしまいます。どんな変化があったら、いつ、どこへ相談するか。そこまで伝えて、初めて使える情報になると思います。
よくある質問
ネクセトールはいつから長期処方できますか?
現行電子添文では2026年11月末日まで1回14日分が限度とされているため、12月1日から解除予定です。実際の処方日数は医師が状態に応じて判断します。
横紋筋融解症は6.3%で起きるのですか?
違います。国内統合データの6.3%(6/96例)は筋肉痛やCK上昇等を含む筋障害関連有害事象です。国内第Ⅲ相試験の副作用全体にも6.3%(3/48例)という別の数字があります。どちらも横紋筋融解症単独の発現率ではありません。
スタチンで筋肉痛があった人なら、必ず安全に使えますか?
必ず安全とはいえません。スタチン治療が適さない場合の選択肢ですが、以前の症状や併用薬を確認し、開始後も症状を観察します。スタチン併用時は定期的なCK測定等が求められます。
ゼチーアとは同じ薬ですか?
違います。ゼチーアは小腸での吸収、ネクセトールは肝臓での合成を抑えます。作用点が異なるため、治療歴や必要な効果などを踏まえて使い分けます。
スタチンと一緒に飲んではいけないのですか?
一律に併用禁止ではありません。国内ではスタチン治療が適さない場合を除いて併用する薬です。ただしスタチン濃度上昇による筋障害に注意し、併用薬の電子添文も確認します。
痛風がある場合は禁忌ですか?
痛風歴・高尿酸血症は禁忌ではありませんが、悪化に注意が必要な背景です。処方医に既往歴を伝え、血清尿酸値の測定等で経過を確認します。
まとめ:長く出せるようになるからこそ、フォローの準備を
ネクセトールは、スタチンで十分に下がらない患者さんや、スタチン治療が適さない患者さんにとって、治療をつなぐ飲み薬の選択肢です。
横紋筋融解症については、「筋肉で活性化されにくい」という特徴だけで安心しすぎず、スタチン併用時の相互作用を確認すること。そして、筋障害関連有害事象の数字を横紋筋融解症の発現率と混同しないこと。この2点は押さえておきたいですね。
12月から日数制限が外れることで、患者さんの負担が減る一方、薬局でお話しする間隔は延びるかもしれません。だからこそ、尿酸値や筋症状、相談のタイミングを今のうちに共有しておく。そのひと手間が、治療を続ける安心につながると思います。
ではではー。しぐでしたっ。


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