こんにちは、薬剤師のしぐです。
今回は、いつもの薬局や薬のお話とは少し違って、**「学校薬剤師」**について。
「学校薬剤師って聞いたことはあるけど、実際には何をしているの?」
薬剤師さんでも、意外とそんなイメージではないでしょうか。
名前だけ聞くと、
「保健室にある薬を管理している薬剤師?」
くらいに思われることもあるかもしれません。
でも実際に学校薬剤師として学校へ行ってみると、仕事の範囲はかなり広いです。
教室の明るさを測ったり。
二酸化炭素濃度を測って換気の状態を確認したり。
飲料水やプールの水質を確認したり。
学校で使用される医薬品や薬品類について助言したり。
さらに、学校保健委員会への参加や、薬の正しい使い方、薬物乱用防止など、子どもたちへの健康教育に関わることもあります。
学校保健安全法では、大学以外の学校に学校薬剤師を置くことが定められていて、学校における保健管理について専門的な立場から技術・指導に携わる役割があります。
つまり、
「学校にいる薬剤師」というより、薬学・衛生の専門家として子どもたちの学ぶ環境を守る薬剤師。
そんなイメージの方が近いんじゃないかなと思っています。
そして2026年4月には、学校薬剤師の実務に直結する**「学校環境衛生基準」も一部改正**されています。
今回は、
学校薬剤師って何をするの?
という基本的なところから、仕事内容、年間スケジュール、実際に行う環境衛生検査まで。
2026年時点の内容をもとに、学校薬剤師として知っておきたい全体像をまとめてみます!

これから初めて学校薬剤師を担当する方にも、
「今年の検査、何から確認しようかな?」
という現役の学校薬剤師さんにも、まず最初に見てもらえるページになれば嬉しいです。
学校薬剤師とは?
学校薬剤師は、文字どおり学校に関わる薬剤師です。
ただ、薬局や病院で働いているときの薬剤師業務とは、ちょっと雰囲気が違います。
学校保健安全法第23条では、大学以外の学校に学校薬剤師を置くことが定められていて、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、高等専門学校などが対象になります。
認定こども園についても、学校保健安全法が準用されています。
そして学校薬剤師の仕事の大きな目的は、
子どもたちが、安全で健康的な環境の中で学校生活を送れるようにすること。
ここなんですよね。
学校薬剤師は、薬だけを見る仕事ではない
薬剤師というと、どうしても「薬」のイメージが強いです。
薬局であれば、
処方箋を確認して、調剤して、監査して、服薬指導をする。
病院であれば、
薬物療法や副作用、投与量、相互作用などを確認する。
でも学校薬剤師になると、扱うものが一気に広がります。
空気、水、光、騒音、化学物質、ダニ、プール、薬品管理……。
なんというか、
大学で勉強した衛生薬学が、久しぶりに全力で戻ってきます(笑)
最初は「照度計なんて最後に触ったのいつだろう?」みたいなところから始まる方も少なくないと思います。
でも、そこが学校薬剤師のおもしろいところでもあるんですよね。
学校薬剤師の仕事内容は?大きく5つに分けて考えるとわかりやすい
学校薬剤師というと環境衛生検査のイメージが強いですが、実際の職務はそれだけではありません。
学校保健計画への関与、学校環境衛生の維持管理、医薬品等の管理への助言、健康相談や保健指導など、かなり幅広い役割があります。
① 学校保健計画などに関わる
学校では、年間を通してどのような保健活動を行っていくのかを「学校保健計画」として考えていきます。
学校薬剤師も、その中で専門的な立場から関わります。
学校薬剤師の仕事って、
「学校から電話が来たから、その日に検査へ行く」
だけではないんですよね。
年度の初めに、
今年はいつ頃、どんな検査を行うのか。
学校側と確認しながら年間の流れを見ておくことが大切です。
ここを最初に整理しておくと、
「えっ、もうプール始まるの!?」
「VOC検査っていつやるんだっけ?」
みたいなことも減らせます。
このあたりは今後、**「学校薬剤師の年間スケジュール」**として別記事で詳しくまとめたいと思います。
② 学校環境衛生検査を行う
おそらく、学校薬剤師らしさを一番感じる仕事がこれ。
学校環境衛生検査です。
教室の空気環境、照度、まぶしさ、騒音、飲料水、水泳プール、VOC、ダニなど、学校という場所には確認しなければならない環境衛生項目がたくさんあります。
学校環境衛生基準では、教室等の環境、飲料水、水泳プール、学校の清潔、衛生害虫などについて基準や検査方法が定められています。
薬局薬剤師として働いていると、
「CO₂が1500ppm」
とか、
「照度300lx」
なんて数字を日常的に見ることはほとんどないですよね。
でも学校薬剤師になると、こういう数字が急に身近になります。
③ 検査結果をもとに学校へ指導・助言する
ここ、個人的にはかなり大切だと思っています。
学校薬剤師の仕事は、
測定して、数字を書いて、終わり。
ではありません。
例えばCO₂濃度が高ければ、
「換気をもう少し工夫できないかな?」
と考える。
照度が低ければ、
照明の状態やカーテン、机の位置なども含めて考える。
飲料水やプールの検査で問題があれば、学校側と一緒に原因や対応を考える。
つまり、
検査することが目的ではなく、その結果を学校環境の改善につなげることが目的。
ここは学校薬剤師として忘れちゃいけないところだと思っています。
④ 医薬品・毒物・劇物などの管理について助言する
学校の中には、意外といろいろな薬品があります。
保健室の医薬品だけではありません。
理科室で使用する薬品だったり、プール管理に使用する薬剤だったり。
学校保健安全法施行規則では、学校薬剤師の職務として、学校で使用する医薬品、毒物、劇物、保健管理に必要な用具や材料の管理について必要な指導・助言を行うことも定められています。
薬剤師という専門性が、すごくわかりやすく活かされる部分ですね。
このあたりも今後、
「学校薬剤師が確認したい保健室・理科室の薬品管理」
としてまとめたいところです。
⑤ 健康相談・保健指導・健康教育に関わる
そしてもうひとつ。
個人的に、学校薬剤師の仕事としてこれからもっと大切になってくると思っているのが、
子どもたちへの健康教育です。
2009年に学校保健安全法等が施行されて以降、学校薬剤師には学校環境衛生だけでなく、健康相談や保健指導への関与も求められています。
医薬品の正しい使い方。
薬物乱用防止。
市販薬のオーバードーズ。
喫煙や飲酒。
そして、がん教育やワクチンなど。
薬剤師だからこそ子どもたちに伝えられることって、実はかなりあります。
環境衛生検査だけではなく、
「薬や健康について正しい情報を伝える人」
というのも、学校薬剤師の大切な役割なんじゃないかなと思っています。
子どもたちの健康という意味では、以前まとめたHPVワクチンについての記事も、学校薬剤師として考えていきたいテーマのひとつです。
【内部リンク:HPVワクチン、日本はまだ遅れている。子宮頸がんを「予防できるがん」にするために思うこと】
学校薬剤師は1年間で何をする?年間スケジュールのイメージ
では、実際に学校薬剤師になると、1年間どんな感じで動いていくのでしょうか。
これは学校や自治体、設備、地域、学校保健計画などによって違うので、
「全国どこでもこの月にこの検査をする」
というわけではありません。
あくまでイメージですが、大きな流れを見てみます。
4〜5月|まずは今年度の予定を確認
年度が変わったら、まず学校側と年間予定を確認。
どの時期に何の検査をするのか。
学校保健委員会はいつなのか。
プールはいつから始まるのか。
学校側との連絡方法も含めて、最初に整理しておくとかなり動きやすいです。
初めて担当する学校の場合は、検査器具や昨年度の記録なども確認しておきたいところ。
春〜夏|教室環境や水に関する検査
気温が上がってくる時期には、教室環境の確認に加えて、飲料水や水泳プールなどの検査が入ってくる学校もあります。
特にプール。
残留塩素やpHなど、薬剤師らしい化学の世界が一気に戻ってきます。
このあたりは実際にやってみると、
「採水ってどこから取る?」
「DPD試薬を入れたあと、どのタイミングで見る?」
みたいな細かいところで迷うんですよね。
なのでプールについては、別記事でかなり実務寄りにまとめる予定です。
【内部リンク予定:学校プールの水質検査|残留塩素・pH・採水方法を学校薬剤師向けに解説】
夏〜初秋|VOC・ダニなど
VOC、つまり揮発性有機化合物の採取は、学校環境衛生基準では教室等の温度が高い時期に行うこととされています。
ダニ・ダニアレルゲンについても、温度・湿度が高い時期に、発生しやすい場所で検査します。
このあたりは、
「なぜこの季節に検査するのか?」
まで理解しておくと覚えやすいです。
秋〜冬|夏とは違う教室環境を見る
教室の環境は、季節によってかなり変わります。
夏は冷房。
冬は暖房。
そして冬になると、寒さから窓を閉める時間も増えてきます。
そこで気になってくるのが換気。
学校環境衛生基準では、CO₂、温度、湿度、照度、騒音など多くの項目について毎学年2回の定期検査が定められています。
季節が違えば、同じ教室でも数値はかなり変わります。
そう考えると、「年2回」という意味も見えてきますよね。
年度末|記録を整理して次年度へ
年度の終わりには、その年に行った検査結果や執務内容を振り返ります。
何か改善をお願いしたところはどうなったか。
次年度も確認した方がいいところはないか。
学校薬剤師の仕事って、その日に完結する仕事ばかりではありません。
前年度の結果を知っているからこそ、
「去年より良くなった」
「ここはまだ改善が必要」
と判断できる部分もあります。
記録って地味なんだけど、大切なんですよね。
【内部リンク予定:学校薬剤師の執務記録簿・検査票の書き方】
学校薬剤師が行う主な環境衛生検査
ここからは、もう少し具体的に見てみます。
学校環境衛生基準にはかなり多くの項目がありますが、まず学校薬剤師として押さえておきたい代表的な検査を紹介します。
教室の空気|CO₂・温度・湿度
まずは空気。

2026年時点の学校環境衛生基準では、
二酸化炭素:1500ppm以下が望ましい
温度:18℃以上28℃以下が望ましい
相対湿度:30%以上80%以下が望ましい
とされています。
CO₂は換気状態を見るうえで、とてもわかりやすい指標です。
人数が多い教室で窓を閉め切っていると、数値が上がっていくこともあります。
測定してみると、
「ああ、換気ってやっぱり大事なんだな」
というのが数字で見えてきます。
【内部リンク予定:学校薬剤師の空気検査|CO₂・温度・湿度はどう測る?】
教室・黒板の照度
照度検査も、学校薬剤師では代表的な検査ですね。
2026年の学校環境衛生基準では、教室などの照度の下限値は300lx。
さらに、教室と黒板については500lx以上が望ましいとされています。
そして、
「教室の真ん中を1か所測れば終わり!」
ではありません。
教室の照度は、指定された位置に最も近い児童生徒の机上で9か所。
黒板についても9か所測定します。
これ、初めてやると意外と迷うんですよね。
しかも、自分が立つ位置によって照度計に影を作ってしまうこともあります。
こういう、
「基準を読むだけでは分かりにくい実際の測り方」
を、今後しっかりまとめていきたいと思います。
【内部リンク予定:学校薬剤師の照度検査|測定位置・9か所の測り方・基準値を解説】
騒音
学校では騒音も環境衛生検査の対象。
現在の基準では、教室内の等価騒音レベルについて、
窓を閉じている場合はLAeq 50dB以下。
窓を開けている場合はLAeq 55dB以下が望ましいとされています。
学校の立地によっては道路や電車、工事など、外部の騒音が影響することもあります。
音も「学びやすい環境」を作る大切な要素なんですよね。
飲料水
当然ですが、学校で子どもたちが口にする水の安全も大切です。
水質については、水道水なのか、それ以外の水源を使用しているのかなどによって確認する内容も変わってきます。
一般細菌、大腸菌、pH、味、臭気、色度、濁度、残留塩素など、水に関する確認項目も多岐にわたります。
ここも、
「学校薬剤師になって初めてちゃんと残留塩素を測った」
という方もいるんじゃないかなと思います。
【内部リンク予定:学校薬剤師の飲料水検査|残留塩素・採水方法・基準値まとめ】
水泳プール
そして夏の学校薬剤師といえば、プール。
プール水では、遊離残留塩素、pH、大腸菌、一般細菌、濁度、総トリハロメタンなどが確認項目になります。
学校のプールって、
ただ水を張って塩素を入れているだけではなくて、
子どもたちが安全に泳げる水質を維持するために、かなり細かく管理されているんです。
ここも学校薬剤師が関わる大切なところですね。

VOC・ダニ
そして、少し馴染みが薄いかもしれないのがVOC。
学校環境衛生基準では、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンなどについて基準値が設定されています。
実は、このVOCについて2026年に大きな変更がありました。
2026年4月、学校環境衛生基準が一部改正
今回の記事を2026年版としている大きな理由がこれです。
2026年4月1日から、学校環境衛生基準が一部改正されました。
今回、学校薬剤師として特に押さえておきたいのが、
エチルベンゼンの基準値変更
これまで、
3,800μg/㎥以下
だったエチルベンゼンの基準値が、
370μg/㎥以下
へ変更されています。
桁がひとつ違います。
これは結構大きいですよね。
さらに、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの検査方法から「容器採取法」が削除されるなど、測定方法についても見直されています。
学校薬剤師として活動していると、
「去年までこうだったから」
で、そのまま進めてしまいたくなることもあります。
でも、こういった基準は少しずつ変わっていきます。
やっぱり定期的なアップデートは大切ですね。
この2026年改正については、それだけでもかなり大事な内容なので、別記事で詳しく整理します。
【内部リンク予定:2026年「学校環境衛生基準」は何が変わった?学校薬剤師が押さえたい改正点】
「検査する人」だけじゃない。学校薬剤師だからできること
ここまで学校薬剤師の検査についてかなり書いてきました。
でも、個人的には、
学校薬剤師の役割って「検査する人」だけではないと思っています。
照度を測る。
CO₂を測る。
残留塩素を測る。
もちろん、それも大切。
でも、本当に大事なのはその先。
その数字を見て、
「子どもたちにとって、この環境はどうなんだろう?」
と考えること。
そして必要であれば、養護教諭の先生や学校の先生方、学校医、学校歯科医などとも連携しながら、より良い環境を考えていく。
薬局では、
病気になった方や、治療を受けている方に薬剤師として関わります。
一方、学校では、
病気になる前の子どもたちの健康を守る。
同じ薬剤師でも、ちょっと違った形で専門性を活かすことができます。
これって、学校薬剤師のすごく魅力的な部分だと思うんですよね。
しぐの学校薬剤師メモ
学校薬剤師の仕事は、
「検査して数字を書くこと」だけではありません。
検査して、
「基準から外れている」
と分かったとき、
「じゃあ、どうしたら良くなる?」
まで学校と一緒に考える。
そこに学校薬剤師としての専門性があるんじゃないかなと思っています。
これからこのカテゴリーでは、
実際に学校へ行ったときに、
「これ、どう測るんだっけ?」
「どこを見ればいい?」
と迷いやすいところまで、できるだけ実務的にまとめていきます。
学校薬剤師についてよくある質問
学校薬剤師は必ず置かなければいけない?
学校保健安全法では、大学以外の学校に学校薬剤師を置くことが定められています。
認定こども園についても同法が準用されています。
学校薬剤師は毎日学校にいるの?
基本的には、学校に常勤している薬剤師ではありません。
普段は薬局や病院などで勤務している薬剤師が学校薬剤師を担当し、環境衛生検査や学校保健活動などに合わせて学校へ出向くケースが多くなっています。
学校薬剤師はどんな検査をするの?
代表的なものとして、教室の空気環境、温度・湿度、照度、まぶしさ、騒音、VOC、ダニ・ダニアレルゲン、飲料水、プール水などがあります。
検査内容や実施時期については、学校環境衛生基準や学校ごとの学校保健計画などに基づいて実施していきます。
薬の管理も学校薬剤師の仕事?
はい。
学校で使用する医薬品、毒物、劇物、保健管理に必要な用具や材料について、必要な指導や助言を行うことも学校薬剤師の職務です。
薬物乱用防止教室などにも関わるの?
学校薬剤師には健康相談や保健指導への関与も求められています。
薬物乱用防止、医薬品の正しい使い方、市販薬のオーバードーズなどは、薬剤師の専門性を活かせる重要なテーマだと思います。
まとめ|学校薬剤師は、子どもたちの「学ぶ環境」を守る薬剤師
学校薬剤師というと、
「学校にある薬を管理する薬剤師」
というイメージを持たれることもあるかもしれません。
でも実際には、
教室の空気を確認して、
明るさを測って、
飲料水やプールの安全を確認して、
学校で使用される薬品について助言して、
ときには子どもたちへ薬や健康について伝える。
こうやって並べてみると、
学校薬剤師の仕事って、本当に幅広いですよね。
そして個人的には、
「病気になった人に薬を届ける薬剤師」とはまた違う形で、子どもたちの健康を守ることができる仕事。
そこが学校薬剤師の大きな魅力だと思っています。
2026年4月には学校環境衛生基準も一部改正されました。
学校薬剤師として知っておきたいことも、少しずつ変わっていきます。
だからこそ、この「学校薬剤師」カテゴリーでは、
照度検査。
CO₂・空気環境検査。
飲料水。
プール。
VOC。
薬品管理。
学校保健委員会。
薬物乱用防止や健康教育。
こういった内容を、ひとつずつ掘り下げていきたいと思います。

単に基準値を並べるだけじゃなくて、
「実際に学校へ行ったとき、どうすればいい?」
まで。
学校薬剤師になったばかりの方にも、
すでに活動している方にも、
「そうそう、これを確認したかった!」
と思ってもらえるカテゴリーにしていけたら嬉しいです。
ではでは。
今回は、学校薬剤師についての全体像をまとめてみました。
これから少しずつ、このカテゴリーも充実させていきます!
しぐでしたっ


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