
薬剤師のしぐです。
目が乾く、ゴロゴロする、なんとなく目もとが気になる。
こうした相談では、まず「どの目薬を使うか」に意識が向きやすいですよね。
でも、目の不快感を考えるときには、まぶたやまつ毛の生え際の状態も見逃せません。
そこで知っておきたいのが、**眼瞼清拭(がんけんせいしき)**です。
難しい名前ですが、まぶたやまつ毛の生え際をやさしく洗い、清潔に保つケアのこと。リッドハイジーンとも呼ばれます。
マイボーム腺機能不全(MGD)の診療ガイドラインでも、治療の選択肢として取り上げられています。
ただし、「目もとを洗えばドライアイが治る」「専用洗浄料なら誰にでも必要」という話ではありません。
今回は、眼瞼清拭の目的や方法、目薬との違い、薬局で伝えたいポイントを整理します。
眼瞼清拭とは?まぶたとまつ毛の生え際を清潔に保つケア
眼瞼清拭は、まぶたの縁やまつ毛の根元周辺に付着した汚れを、やさしく取り除くケアです。
目もとには、皮脂や目やに、ほこり、メイクの残りなどが付着します。
普段から洗顔していても、目に洗顔料が入るのを避けるため、まつ毛の生え際までは十分に洗えていないこともありますよね。
眼瞼清拭では、こうした場所を意識して、目もとの状態に合った方法で清潔に保ちます。
ここで押さえたいのは、眼球の表面を洗う「洗眼」とは、ケアする場所が違うということです。
| ケア | 主な対象・目的 |
|---|---|
| 眼瞼清拭 | まぶたの縁・まつ毛の生え際を清潔に保つ |
| メイク落とし | アイメイクなどを落とす |
| 洗眼 | 眼表面を洗浄する |
| 点眼 | 薬剤ごとの作用で、眼表面の状態や炎症などに対応する |
目もと用洗浄料を、目の中に入れて洗うわけではありません。
洗い流すタイプの製品では、目を閉じてまぶたや生え際をやさしく洗い、十分にすすぐことが基本になります。

なぜまぶたのケアが、ドライアイと関係するの?
まぶたには、マイボーム腺という脂を分泌する腺があります。
この脂は涙の表面に油層をつくり、涙の安定性を支えています。
つまり、涙を考えるときには、水分だけでなく油分にも目を向ける必要があるのです。
マイボーム腺の働きに異常が起こった状態が、マイボーム腺機能不全、略してMGDです。
脂の分泌状態が変わることで涙が不安定になり、目の乾燥感や不快感につながることがあります。
「目が乾くなら、水分を補えばよいのでは?」
そう思いやすいところですが、涙を安定させる仕組みには、まぶたから分泌される脂も関わっています。
目薬を使っていても不快感が続く場合に、まぶたの状態も確認する意味があるのですね。
ただし、MGDとドライアイは同じ病気ではありません。
目が乾くから必ずMGD、まつ毛の根元に汚れがあるからMGD、とは判断できません。
症状に加え、まぶたの縁や分泌物などを眼科で評価する必要があります。

ガイドラインでの位置づけは「弱く推奨」
2023年に発行されたMGDの診療ガイドラインでは、MGD患者に対する眼瞼清拭を、**「実施することを弱く推奨する」**としています。
症状や涙の安定性などが改善する可能性がある一方で、眼瞼清拭そのものの有効性を検証した研究は限られています。
また、使用する洗浄料によっては、刺激などの有害事象が起こる可能性にも注意が必要です。
「弱く推奨」と聞くと、あまり意味がないように感じるかもしれません。
しかし、効果がないという意味ではありません。
期待できる効果や刺激などの負担を踏まえ、患者さんの状態や希望に応じて取り入れるケア、と理解するとよいでしょう。
一方で、この推奨を「すべての人に専用洗浄料が必要」と広げることもできません。
ケア方法への推奨と、特定商品の有効性は分けて考えることが大切です。
温めるケアと、洗うケアはどう違う?
MGDのホームケアでは、眼瞼清拭とともに**温罨法(おんあんぽう)**が取り上げられます。
温罨法は、まぶたを温めるケアです。
| ケア | 主なねらい | MGD診療ガイドラインでの位置づけ |
|---|---|---|
| 温罨法 | まぶたを温め、脂の流れを助ける | 実施することを強く推奨 |
| 眼瞼清拭 | まぶたの縁や生え際の汚れなどを取り除く | 実施することを弱く推奨 |
温めることと洗うことでは、役割が異なります。
状態に応じて組み合わせることがありますが、自己流で強く温めたり、力を入れてまぶたを押したりする必要はありません。
温熱製品を使う場合は、温度や使用時間などの説明を守りましょう。熱さを我慢して使うと、やけどにつながるおそれがあります。
また、アレルギー性結膜炎などでは、温めることで充血やかゆみが強くなる場合があります。
「目の不調には何でも温めればよい」と考えず、症状がある場合は眼科で相談してください。

眼瞼清拭の方法|こすらず、押しつけず、やさしく
ここでは、洗い流すタイプの目もと用洗浄料を使う場合の流れを紹介します。
使用量や細かな方法は、製品の説明や眼科で受けた指示を優先してください。
1.手を清潔にする
最初に手を洗い、汚れた手で目もとに触れないようにします。
コンタクトレンズは外してから行いましょう。
2.メイクを落とす
メイクをしている場合は、通常のクレンジングや洗顔を行います。
目もと用洗浄料だけで、すべてのアイメイクを落とそうとしないことも大切です。
3.目を閉じて、洗浄料をやさしくなじませる
製品に表示された量を手に取り、目を閉じて、まぶたの縁やまつ毛の根元周辺にやさしくなじませます。
指の腹を使い、強くこすらないようにしましょう。
4.眼球を押さない
汚れを取りたいからといって、力を入れすぎないことが大切です。
まぶたを強く押して、脂を絞り出そうとするのも避けてください。
5.水またはぬるま湯で十分に流す
洗い流すタイプでは、洗浄料が残らないように十分にすすぎます。
拭き取りタイプなどでは手順が異なるため、どの製品にも同じ使い方を当てはめないようにしましょう。
「丁寧に洗う」と「強く洗う」は別です。
目もとは、力を足すより、やさしく扱うことを意識したいですね。
アイシャンプーは、どんな位置づけ?
「アイシャンプー」は、目もとやまつ毛を洗う専用洗浄料の商品名です。
眼瞼清拭というケアと、それに使用する商品は区別して理解しましょう。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 眼瞼清拭 | まぶたやまつ毛の生え際を清潔に保つケア |
| アイシャンプー | 目もと専用洗浄料の商品名 |
MGDに対する眼瞼清拭の推奨があることは、特定商品のMGD治療・予防効果が保証されていることを意味しません。
薬局で案内するときも、「これでドライアイが治ります」と伝えるのではなく、洗浄の目的と適切な使い方を説明したいところです。
また、専用品であっても、すべての人に刺激なく使えるとは限りません。
使用中や使用後に赤み、かゆみ、痛み、違和感などが出た場合は使用を中止し、症状が続く場合は眼科へ相談してください。
「しみるけれど、効いているのかな」と我慢して続ける必要はありません。
薬剤師の認知調査で示されたこと
2026年10月に公表された企業調査では、回答した薬剤師について、次の結果が示されました。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 「眼瞼清拭」「リッドハイジーン」という用語を知らなかった | 61.2% |
| 目もとを洗うケアがあること自体を知らなかった | 41.8% |
| 説明後、患者への情報提供に前向きだった | 70.1% |
この結果を見ると、眼瞼清拭という言葉に、まだなじみのない薬剤師もいることがうかがえます。
ただし、調査対象は学術大会の企業展示ブースを訪れた薬剤師134人です。
任意回答による調査で、回答者には製品提供も行われています。そのため、「全国の薬剤師の6割が知らない」と一般化することはできません。
また、70.1%という数字は説明後に尋ねた「意向」であり、実際の案内実績や、説明による行動変化を示すものではありません。
数字の意味は丁寧に受け止めつつ、薬局での説明を振り返るきっかけにしたいですね。
目薬の使い方は説明できても、「まぶたのケアはどうしたらよいですか?」と聞かれると、説明に迷うことがあるかもしれません。
商品名だけでなく、ケアの目的や注意点まで理解しておくことが大切だと感じます。

薬局では、商品紹介の前に何を確認する?
目の不快感を相談されたときには、まず症状や治療状況を確認したいところです。
- いつから、どちらの目に症状があるか
- 痛みや見え方の変化がないか
- 充血、目やに、まぶたの腫れがないか
- コンタクトレンズを使用しているか
- 眼科で診断されている病気があるか
- 使用中の点眼薬があるか
- メイクや洗浄料を変えた後から症状が出ていないか
薬局でMGDを診断することはできません。
「まぶたやまつ毛の生え際を清潔に保つケアもあります。ただ、乾燥や不快感の原因はいろいろあるので、症状が続く場合は眼科で確認しましょう」
このように、ケアの選択肢と受診の必要性を一緒に伝えると、患者さんも理解しやすいと思います。
目薬を使っている方には、回数や点眼方法、使い続けられているかも確認したいですね。
新しい商品を加える前に、今の治療やケアを整理する。そこにも薬局でできる支援があります。

痛み・見え方の変化・強い充血は、受診を優先
次の症状がある場合は、眼瞼清拭だけで様子を見ず、速やかに眼科を受診してください。
- 目の痛み
- 視力低下や、いつもと違うかすみ
- 強い充血
特に、急に見えにくくなった場合や強い痛みがある場合は、受診を先延ばしにしないでください。
また、軽い症状でも、繰り返す場合や長引く場合には原因の確認が必要です。
ケアを始めてから悪化した場合は、いったん中止して相談しましょう。
処方されている点眼薬を、眼瞼清拭に置き換えて自己判断で中止しないことも大切です。
まとめ|目薬の説明に、まぶたのケアという視点を
眼瞼清拭は、まぶたやまつ毛の生え際を清潔に保つケアです。
MGDの診療ガイドラインでは実施することが弱く推奨されていますが、すべての目の不快感に対応できるわけではありません。
また、ケアへの推奨と、特定商品の治療効果は分けて考える必要があります。
薬局で大切にしたいのは、ケアの存在だけでなく、やさしい洗い方、刺激が出たときの対応、受診を優先する症状まで伝えること。
目薬を正しく使う支援に、まぶたのケアという視点を加える。
日々の目の相談に対応するとき、覚えておきたい選択肢ですね。
よくある質問
Q1.眼瞼清拭は何と読みますか?
「がんけんせいしき」と読みます。まぶたやまつ毛の生え際を清潔に保つケアで、リッドハイジーンとも呼ばれます。
Q2.目の中を洗うことですか?
主な対象は、まぶたの縁やまつ毛の生え際です。目もと用洗浄料を目の中に入れて洗うものではありません。
Q3.眼瞼清拭でドライアイは治りますか?
MGDが関係する場合に、症状の改善が期待されるケアの一つです。ただし、ドライアイの原因はさまざまで、眼瞼清拭だけで治るとは限りません。
Q4.必ず専用洗浄料が必要ですか?
必須とは限りません。水で湿らせた綿球を使う方法も研究されています。目の状態に合った方法を眼科で確認しましょう。
Q5.毎日行ってもよいですか?
継続して行うケアとして紹介されていますが、頻度は製品の説明や眼科の指示に従ってください。刺激が出る場合は中止して相談しましょう。
Q6.温めてから洗えばよいですか?
MGDでは、温罨法と眼瞼清拭を組み合わせることがあります。ただし、アレルギーなどで温めるとかゆみや充血が悪化する場合もあるため、症状に応じて眼科で確認してください。
Q7.洗浄料がしみるのは、効いている証拠ですか?
効いている証拠とは判断できません。刺激を我慢せず、洗い流すタイプでは十分にすすいでください。症状が続く場合は使用を中止し、眼科へ相談しましょう。
Q8.普通の石けんやシャンプーで代用できますか?
一般の石けんや頭髪用シャンプーを、自己判断でまつ毛の生え際に使うのは避けましょう。目もとへの使用を想定した製品かを確認し、眼科で勧められた方法や製品の説明に従ってください。
Q9.コンタクトレンズをつけたまま行えますか?
コンタクトレンズは外してから行ってください。目の痛みや充血がある場合は、レンズの使用を控え、眼科へ相談しましょう。
Q10.目薬の代わりになりますか?
代わりにはなりません。処方された点眼薬は自己判断で中止せず、眼瞼清拭を取り入れる場合も治療方針を確認してください。



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