有料老人ホームで薬局を指定できなくなる?2027年登録制と施設在宅への影響

こんばんは、薬剤師のしぐです。
「施設に入るので、これからは指定の薬局にお願いします」
薬局で患者さんを支えていると、こんな場面に出会うことがあります。飲み方の工夫や副作用の経過まで把握していた患者さんが、入居をきっかけに薬局を変更する。施設側には薬の管理をまとめたい事情もあるでしょうし、新しい薬局が丁寧に引き継ぐケースもあります。
ただ、そこで確認したいのが、患者さん本人が選べているかということです。
厚生労働省は2026年10月9日の検討会で、有料老人ホームの新たな登録制度について、2027年12月の施行を予定する方針を示しました。契約の基準には、提携する薬局などの利用を入居条件にする「囲い込み」を防ぐ内容が含まれています。
今回は、薬局指定の何が問題になるのか、施設との連携はどう考えるのか、薬局で今から準備できることを整理します。
まず結論:入居条件として薬局を指定することが問題に
今回のポイントは、ホームと関係のある薬局の利用を、入居契約の条件にしないということです。
ホームに併設・隣接する薬局、同一・関連法人の薬局、提携関係などのある薬局の利用を条件にすることが、不当な条件として位置づけられています。関係する事業所などの利用に応じて、家賃を軽減するような優遇措置も対象です。
「薬局指定は原則NG」という見出しだけで読むと、施設に関わる薬局が決まっていること自体、すべて問題になるように感じるかもしれません。
しかし、判断の中心になるのは、入居者の選択が確保されているか、利用が条件づけられていないかです。提携先の存在と、提携先を使わなければ入居できない仕組みは、分けて考える必要があります。
※本記事は2026年10月10日時点の公表内容に基づきます。政省令等の具体的な規定は今後変更される可能性があります。
2027年12月に始まる予定の「登録制」とは?
新登録制度は、一定の介護・医療ニーズを持つ高齢者を入居対象とする有料老人ホームについて、契約や人員、設備、運営などの基準を設ける仕組みです。
現時点で示されている日程は、次のとおりです。
| 時期 | 予定されている内容 |
|---|---|
| 2026年内 | 関連する政省令の公布 |
| 2027年12月 | 新登録制度の施行 |
| 施行から1年間 | 既存ホームが登録へ移行するための経過措置 |
| 2028年12月 | 移行に係る経過措置の終了 |
ここで注意したいのは、2027年12月に、すべての既存ホームが一斉に移行を完了するという日程ではないことです。また、移行猶予があるからといって、現在の契約や説明の問題をそのままにしてよいと受け止めるのも適切ではありません。
薬局側としては、制度が動き始める前に、連携先の施設と説明の仕方を確認しておくと実務につなげやすくなります。
すべての有料老人ホームが同じ扱いになる?
登録制の対象として、中重度の要介護者を入居対象とするホームに加え、要介護者で認知症の日常生活自立度がⅢ以上の方や、一定の医療ニーズがある方を入居対象とするホームが示されています。医療ニーズの具体的な範囲は、解釈通知などで規定する方向です。
したがって、「有料老人ホームという名前なら、すべて一律に同じ登録対象」とは整理できません。
一方で、登録対象外の届出ホームについても、入居者の尊厳や適切な処遇を確保するため、登録基準とおおむね同様の遵守事項を定める方向です。
薬局で「住宅型だから対象」「介護付きだから関係ない」と名称だけで判断せず、施設側の確認状況や今後の自治体の案内を共有していくことが大切です。

どのような説明や仕組みを見直す必要がある?
以下は、公表された契約基準を薬局の場面に置き換えた実務上の整理です。個別の契約に対する法的判断を示すものではありません。
| 場面 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 「入居するには、提携薬局を使ってください」 | 薬局利用が入居条件になっていないか |
| 「提携薬局を使えば家賃が安くなります」 | 関係事業所の利用と家賃優遇が結びついていないか |
| 「今の薬局は使えません。全員変更です」 | 本人の希望を聞かず、一律に選択を妨げていないか |
| 提携薬局の対応内容を説明している | 説明後に本人が選べるか、他の選択肢を排除していないか |
| 以前からの薬局の継続を希望された | 訪問・連絡・薬の管理など、継続に必要な条件を具体的に調整できるか |
書面だけを直しても、実際の案内が「この薬局しか選べません」のままなら、選択の機会は広がりません。
入居説明をする職員、薬を受け取る職員、訪問する薬剤師で説明が食い違わないよう、日々の運用まで確認しておきたいところです。
地域に対応できる薬局が少ない場合は?
地方部などで利用できる事業所が限られ、特定の事業所の利用が事実上不可欠となる場合、その事情自体を不当な条件とは解さないという留保も示されています。
ただし、「地域で対応できる薬局が少ない」と、「施設側がまとめたほうが楽だから一つにしたい」は事情が異なります。
実務では、訪問できる範囲、緊急時の連絡、必要な薬の供給、服薬管理の支援などを具体的に確認することが重要でしょう。単に薬局の軒数だけでなく、その患者さんに必要な対応ができるかまで話し合う必要があります。
この点も、今後の解釈通知や自治体の運用を確認したい部分です。
施設と薬局の連携は、これからも大切
施設での薬の管理は、調剤して届ければ終わりという仕事ではありません。
飲み忘れ、残薬、嚥下の状態、食事量の変化、眠気やふらつき。日々の様子を見ている施設職員と薬剤師が情報を共有することで、処方の見直しにつながることもあります。
そのため、提携する薬局の特徴や対応内容を説明することには意味があります。ただし、本人の希望を聞いたうえで、実際に必要な支援を組み立てることが前提です。
たとえば、「今までの薬局を続けたい」という希望があったときには、最初から変更を求めるのではなく、次のことを相談できます。
- これまでの薬局が訪問や薬の供給に対応できるか
- 処方変更の連絡を、誰がどこへ伝えるか
- 一包化や服用時点の表示をどう統一するか
- 夜間・休日の相談先をどう確保するか
- 複数の薬局が関わる場合、薬の情報をどこに集約するか
選択を尊重することと、安全に薬を管理することを、両方かなえるための調整が必要です。
地域の薬局が協力して在宅対応を支える取り組みは、コチラでも整理しています。


薬局で今から準備したい5つのこと
ここからは、今回の制度の方向性を踏まえた薬局実務上の提案です。以下の様式や記録を、今回の制度で一律に義務づけられたものとして扱う趣旨ではありません。
1.施設との説明文を確認する
施設の案内文や薬局の紹介文に、「指定薬局」「必ず変更」「全員利用」といった表現がある場合、何を意味しているのか確認しましょう。
実際には本人の希望に応じて調整していても、案内文だけでは強制と受け取られることがあります。対応内容を伝える言葉と、利用を義務づける言葉を整理することが出発点です。
2.本人の希望と、説明した内容を残す
施設から処方箋が届くと、薬局が選ばれた経緯が見えにくくなります。
本人は継続を希望しているのか、変更に納得しているのか。家族が相談に参加している場合も、本人の意向をどのように確認したのかを共有しておくと、あとから話が食い違うことを防ぎやすくなります。
認知機能や意思表示の難しさがある場合は、本人に伝わる説明方法や意思決定の支援も、関係職種と検討したいところです。
3.「薬局が変わると失われやすい情報」を引き継ぐ
薬の一覧だけでは伝わらない情報があります。
「この錠剤は飲みにくい」「昼の薬は残りやすい」「以前この薬で強く眠くなった」「ご本人は袋の色で飲む時間を見分けている」。こうした情報は、生活の中で薬を使うために欠かせません。
薬局変更が本人の希望で行われる場合も、必要な同意や情報管理に配慮しながら、実際の飲み方と困り事まで引き継ぎたいですね。
4.薬の管理の役割を決める
施設、薬局、訪問看護、主治医で、薬の管理のどこを担当するのか確認します。
| 確認項目 | 話し合いたい内容 |
|---|---|
| 処方変更 | 最新の指示を確認し、旧薬を整理する担当 |
| 残薬 | 数量と理由を確認し、処方元へ伝える流れ |
| 頓服 | 指示内容、使用記録、効果の確認方法 |
| 体調変化 | 眠気・ふらつき等を、いつ誰へ共有するか |
| 入退院 | 持参薬と退院処方を照合する担当 |
| 緊急時 | 夜間・休日の連絡先と、薬の供給の相談先 |
「どの薬局を選ぶか」を話し合うときに、「選んだあと、どう安全に支えるか」まで決めておくことが大切です。
5.対応できることを、具体的に伝える
薬局が選ばれるために伝えたいのは、薬を届ける速さだけではありません。
残薬や飲みにくさにどう対応するか、状態の変化をどう拾うか、施設職員が相談しやすいか、主治医へどのような情報を返せるか。こうした仕事を具体的に説明できると、本人や家族も選びやすくなります。
薬剤師の役割を考える視点は、コチラにもつながる部分です。

入居を予定している本人・家族が聞いておきたいこと
薬局の選択が気になる場合は、施設の説明時に、次のように確認すると話を進めやすくなります。
- 今までの薬局を続けることはできますか?
- 提携薬局を使わない場合、入居条件や家賃に違いはありますか?
- 提携薬局は、どのような対応をしてくれますか?
- 薬局を変更するとき、薬の情報はどう引き継がれますか?
- 入居後に薬局を変更したくなった場合、誰に相談できますか?
対応が難しいと言われた場合も、訪問範囲や連絡体制など、どの点が難しいのかを確認すると、調整できることが見つかるかもしれません。
説明と契約内容に食い違いがある場合は、施設の相談窓口や、所在地の自治体の有料老人ホーム担当窓口へ相談する方法があります。

しぐ的には:「入居したあとも、その人の薬を支える」が大事
施設側が薬の管理をまとめたくなる事情は、薬局としても理解できます。薬の受け取りや処方変更の連絡がばらばらだと、現場の負担は大きくなります。
でも、その都合だけで、患者さんが積み重ねてきた薬局との関係まで切り替えてよいのか。今回の動きは、そこを考え直すきっかけになると感じます。
以前の薬局が継続する場合も、新しい薬局へ引き継ぐ場合も、目指すところは同じです。入居したあとも、その人の薬の使い方と暮らしを、途切れずに支えること。
薬局としては、「施設との契約があるから担当する」という説明だけでなく、「こういう支援ができるから、この薬局を選びたい」と思ってもらえる仕事を積み重ねたいですね。
地域の高齢者を支える薬局の取り組みは、コチラも参考になります。

よくある質問(FAQ)
Q.有料老人ホームの薬局指定は、すでに全面禁止されたのですか?
2026年10月10日時点で、今回の新登録制度は施行前です。2027年12月の施行を予定する方針が示されています。「いま新制度で全面禁止された」とは整理できません。
Q.提携薬局があるだけで問題になりますか?
提携先があることだけを理由に、今回の不当な条件に当たるとは読めません。利用を入居条件にしていないか、本人の希望を妨げていないかなど、契約と実際の運用を確認する必要があります。
Q.本人が納得して提携薬局を選べばよいのですか?
本人の選択が確保されていることが重要です。形式的な同意だけで済ませず、説明の内容や、ほかの薬局の利用を希望したときの扱いも確認したいところです。
Q.提携薬局を使うと家賃が安くなる仕組みも対象ですか?
関係する事業所などの利用に応じた家賃軽減等の優遇措置も、不当な条件として示されています。
Q.既存のホームも2027年12月までに登録を終えるのですか?
既存ホームの移行には1年間の経過措置を設け、2028年12月に終了する予定です。個別の手続きや基準の適用は、今後の政省令・自治体の案内を確認する必要があります。
Q.薬局の在宅訪問や報酬の算定条件も変わるのですか?
今回の登録基準から、薬局の訪問や各報酬の算定要件が自動的に変わるとはいえません。薬局側のサービス提供や請求は、それぞれの制度・要件に沿って確認します。
Q.今までの薬局を必ず継続できますか?
希望は尊重されるべきですが、訪問範囲や必要な対応などの調整は必要です。今回の内容から、どの薬局にも無条件の継続対応義務が生じるとまではいえません。難しい場合も、安全な引き継ぎを関係者で相談しましょう。
まとめ
有料老人ホームの新登録制度は、2027年12月の施行を予定しています。薬局に関わる大きなポイントは、提携薬局などの利用を入居条件にすることや、利用に応じた家賃優遇などの囲い込みを防ぐ方向が示されたことです。
施設との連携を続けながら、本人の選択を尊重し、服薬管理を安全につなぐ。薬局としては、契約書の言葉だけでなく、説明、連絡、引き継ぎの実際まで整えておきたいですね。


コメント